高齢入院患者の骨盤運動がFunctional Reach Testに与える影響

【目的】機能的上肢到達検査(Functional Reach Test:以下,FRT)は立位バランス能力を簡便に表す指標として広く用いられている。これまでFRT値に影響を与える因子として、年齢、体幹前傾角度などが報告されているが、骨盤の前後傾運動については検討されていない。今回、高齢入院患者を対象として矢状面での骨盤運動について分析を行ったので報告する。 【方法】研究の主旨と内容の説明を行い、参加の同意を得られたFRT測定可能な65歳以上の入院患者10名(男性5名、女性5名、平均71.3±11.5歳、平均身長155.1±7.4 cm、平均体重46.6±8.6 kg)を対象とした。あらかじめ股関...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 26; p. 75
Main Authors 御子神, 由紀子(MD), 浅井, 葉子, 渡辺, 寛(MD), 岩本, 大志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2007
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.26.0.75.0

Cover

More Information
Summary:【目的】機能的上肢到達検査(Functional Reach Test:以下,FRT)は立位バランス能力を簡便に表す指標として広く用いられている。これまでFRT値に影響を与える因子として、年齢、体幹前傾角度などが報告されているが、骨盤の前後傾運動については検討されていない。今回、高齢入院患者を対象として矢状面での骨盤運動について分析を行ったので報告する。 【方法】研究の主旨と内容の説明を行い、参加の同意を得られたFRT測定可能な65歳以上の入院患者10名(男性5名、女性5名、平均71.3±11.5歳、平均身長155.1±7.4 cm、平均体重46.6±8.6 kg)を対象とした。あらかじめ股関節・膝関節・足関節の関節可動域、SLR、指床間距離、足関節底屈筋力の指標としてculf raise回数の測定を行った。FRT時の骨盤前後傾角度の計測には、デジタルカメラを用いて、上前腸骨棘、上後腸骨棘にマーカーを貼付し、立位と最大到達時のマーカー位置を撮影した。FRTは練習2回ののち5回測定した。画像から立位ならびに、最大到達時の矢状面上に投影された骨盤傾斜角度を計測し、骨盤の前後傾運動角度を算出した。計測されたFRT値と他の測定項目において有意水準5%にてPearsonの相関分析を行った。 【結果】年齢が最も相関関係が強く、年齢が高いほどFRT値は低下していた(r=-0.919)。FRTを行う際に、骨盤は前傾運動を行っており、骨盤前傾運動角度(r=0.814)、culf raise回数(r=0.743)においても有意な相関を認め、骨盤の前傾運動角度が大きいほどFRT値は増加する傾向があった。しかしながら立位および、最大到達時の骨盤前傾角度においては、有意な相関は認められなかった。 【考察】今回、有意な相関が認められた項目は年齢、骨盤前傾運動角度、culf raise回数であり、年齢が高ければFRT値が低下する傾向は先行研究と同様に認められた。骨盤前傾運動は上半身重心を前方へ移動させる役割を果たしている。FRTにおいても、骨盤前傾運動によって、より身体重心を前方移動させFRT値を増加させることを実現していると思われる。また足関節底屈筋も身体重心を前方へ移動させる作用を有しているためにFRT値と強い相関関係が認められるものと考えられた。 【まとめ】高齢者のFRTに影響を及ぼすものとして、年齢、骨盤前傾運動角度、足関節底屈筋力が大きく関与していた。FRTにおける骨盤前傾運動は身体重心を前方へ移動させるための働きとして重要であると考えられた。
Bibliography:75
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.26.0.75.0