虚弱高齢者における身体機能と転倒の長期的調査 ―第1報

【目的】 高齢者の約25%は年1回以上の転倒を経験し、ADL・QOLの急激な低下を招く事が報告されている。また、転倒を繰り返す高齢者も多く、転倒への恐怖心により身体活動量が低下する事も報告されている。高齢者の転倒と身体機能の関係の報告は散見され、先行研究では最大歩行速度は1m/s以上、Timed up and go test(TUG)は13.5sec以上、片脚立位保持時間は左右合計8sec以下で各々転倒のリスクが高いとされている。 虚弱高齢者においても、転倒予防や転倒リスクの判断は重要な要素であるが、詳細な評価や報告は少ない。今回、転倒リスクの評価として身体機能と転倒の関係の特徴を長期的に調査...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 94
Main Authors 小林, 映仁, 宮川, 研, 菊池, 康久, 立元, 寿幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.94.0

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Summary:【目的】 高齢者の約25%は年1回以上の転倒を経験し、ADL・QOLの急激な低下を招く事が報告されている。また、転倒を繰り返す高齢者も多く、転倒への恐怖心により身体活動量が低下する事も報告されている。高齢者の転倒と身体機能の関係の報告は散見され、先行研究では最大歩行速度は1m/s以上、Timed up and go test(TUG)は13.5sec以上、片脚立位保持時間は左右合計8sec以下で各々転倒のリスクが高いとされている。 虚弱高齢者においても、転倒予防や転倒リスクの判断は重要な要素であるが、詳細な評価や報告は少ない。今回、転倒リスクの評価として身体機能と転倒の関係の特徴を長期的に調査し検討した。 【方法】 2008年10月から2011年2月までの間に通所リハビリテーション利用中の要支援者(以下、対象者)計25名(男9:女16)を対象として診療録より後方視的に身体機能と転倒との関係を調査し、一般的に報告されている評価基準と抽出データの比較検討を行い、相応した統計学的処理を行うことで、転倒リスクの評価基準や転倒リスクの評価項目の特徴を明らかにした。また、研究にあたり対象者には十分な説明を行い、同意を得た上で、東京医科大学茨城医療センター倫理委員会の承認のもと行った。 対象者は平均年齢79.4±9.8歳であり、調査期間中2回以上の転倒経験により非転倒群(19名)と転倒群(6名)にグループ分けした。身体機能評価は調査期間中の間1ヶ月に1回、最大歩行速度・TUG・片脚立位時間を各々3回計測し、最大値を該当月の値としていた。評価開始月から3ヶ月間のデータをもとに転倒リスク値と比較し、グループ間との相関について検討した。統計学的処理にはSPSSstatics 17.0Jを使用し、統計処理には有意水準5%を採択した。 【結果】 結果は、3項目とも転倒リスク値に該当する対象者は転倒群で多かったが、グループ間の相関はTUGのみであった。(片脚立位(非転倒9/19人;47%、転倒4/6人;67%)、TUG(非転倒9/19名;47%、転倒6/6名;100%)、歩行速度(非転倒12/19人;63%、転倒5/6名;83%)) 【考察】 これらの結果は、高齢者の中でも後期高齢者に相当する転倒リスク値は一般的な転倒リスク値のみでは判断できない可能性がある事が示唆されるが、TUGは後期高齢者においても転倒リスク判断の為に有用性が認められるものであった。 【まとめ】 今回得られたデータにより転倒者の長期的な経過を把握し、比較検討をすすめ、転倒者の身体機能の傾向や特徴をとらえ、身体機能の低下に伴う転倒のリスクを事前に評価する方法を模索していきたい。
Bibliography:O2-15-094
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.94.0