Duchenne型筋ジストロフィー症児の発達と機能低下の推移

【目的】  文献によると、Duchenne型筋ジストロフィー(duchenne muscular dystrophy:以下DMD)は、乳児期には発達の遅れがなく、歩行開始が1歳6ヵ月を過ぎるもの、3~5歳で歩行時のつまずきや不安定歩行が出現し、発達の遅れに気がつく事が多い様である。今回、当院に外来通院をしているDMD児の理学療法を行っている中で、乳児期から粗大運動発達に遅れがある事や、機能低下の時期などに若干の知見が得られたので報告する。 【対象および方法】  DMD男児15例、年齢3歳5ヵ月~14歳1ヵ月(平均9歳3ヵ月±3.3)。通常の理学療法評価に加え、出生時から乳幼児期、学童期の様子を...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 12
Main Authors 並木, 亮, 桐山, 剛, 高橋, 修, 川上, 司, 田中, 友美, 長谷川, 和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.12.0

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Summary:【目的】  文献によると、Duchenne型筋ジストロフィー(duchenne muscular dystrophy:以下DMD)は、乳児期には発達の遅れがなく、歩行開始が1歳6ヵ月を過ぎるもの、3~5歳で歩行時のつまずきや不安定歩行が出現し、発達の遅れに気がつく事が多い様である。今回、当院に外来通院をしているDMD児の理学療法を行っている中で、乳児期から粗大運動発達に遅れがある事や、機能低下の時期などに若干の知見が得られたので報告する。 【対象および方法】  DMD男児15例、年齢3歳5ヵ月~14歳1ヵ月(平均9歳3ヵ月±3.3)。通常の理学療法評価に加え、出生時から乳幼児期、学童期の様子を質問紙にて両親から聴取した。また、粗大運動発達の比較対象として正常発達した20例(男児14例、女児6例)の子どもの様子を後方視的に聴取し、統計処理にて比較・検討を行った。いずれも、調査の趣旨を説明し、同意をいただいた上で質問紙を実施した。 【結果】  DMD群と正常発達群を比較した結果、粗大運動の発達において、頚定と寝返りの時期において有意差は見られなかった。座位獲得8.5ヵ月±2.4、起き上がり9.3ヵ月±1.9、ハイハイ10.6ヵ月±2.5、立ち上がり15.6ヵ月±8.2、独歩18.4ヵ月±5.8については、いずれも獲得時期の遅れに有意差(p<0.01)が見られた。知的情緒面においては、初語(24.3ヵ月±16.1)の遅れに有意差(p<0.05)が見られた。DMD群15例中、合併症としてPDDが2例、MRが2例見られた。粗大運動機能の低下がみられる時期は、登攀性起立3.8歳±2.3、不安定歩行6.6歳±2.9、椅子からの起立困難9.3歳±1.3、独歩困難10歳±2.1である事がわかった。両親が身体の異変や病気に気付く時期は2.2歳±1.5であり、リハビリテーションの開始時期は4.6歳±2.2である事がわかった。 【考察】  先行研究において、乳児期には発達の遅れに気付かれにくいとされていたが、座位獲得以降に明らかな発達の遅れが出現してくる事がわかった。粗大運動の発達では、独歩獲得18.4ヵ月±5.8に対して、6.6歳±2.9で歩行が不安定になってしまう事から、4~6歳頃に獲得している運動機能が発達のピークである事が示唆される。また、椅子からの起立が困難になると、ほぼ1年以内に独歩困難となり、抗重力環境での下肢活動の機会が減少し、その後のdisused atrophyが懸念される。両親が、身体の異変や病気に気付く時期2.2歳±1.5に対し、リハビリテーション開始時期4.6歳±2.2であり、約2年のtime lagが生じている事から、乳幼児検診等で発達スクリーニングを行い、早期に医療連携をとり、専門的医療とリハビリテーションの介入が乳児期から行える事が望ましいと考える。 【おわりに】  今後は、今回得られた結果をもとに、各発達段階に適したリハビリテーションをシステマティックに行えるようなチャートを検討して行きたいと考えている。
Bibliography:O1-2-012
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.12.0