症例 慢性肺血栓塞栓症の1例

本邦では,比較的まれとされている慢性肺血栓塞栓症を経験した.症例は54歳の男性で,当科入院7カ月前より労作時の息切れが出現している.肺血流シンチ,肺動脈造影にて肺動脈の閉塞が認められ,肺動脈圧は108/36mmHg右室圧は108/2mmHgであった.インジウムシンチでは肺動脈閉塞部に一致して集積が認められた.治療法として肺動脈血栓内膜摘出術を考え気管支動脈造影を施行したが,気管支動脈を介して閉塞部より末梢の肺動脈は造影されず,手術成功率は低いと判断された. 不幸にも本症例は手術を待たずに死亡したが,剖検では左肺動脈主幹部に器質化した血栓を認め,末梢の肺動脈には内膜の細胞性増殖と中膜の肥厚など肺...

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Published inShinzo Vol. 18; no. 7; pp. 854 - 860
Main Authors 荒井, 裕, 柴田, 昭, 和泉, 徹, 高木, 秋夫, 木村, 道夫, 大西, 義久, 相沢, 義房, 服部, 晃, 長山, 礼三, 山本, 朋彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1986
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.18.7_854

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Summary:本邦では,比較的まれとされている慢性肺血栓塞栓症を経験した.症例は54歳の男性で,当科入院7カ月前より労作時の息切れが出現している.肺血流シンチ,肺動脈造影にて肺動脈の閉塞が認められ,肺動脈圧は108/36mmHg右室圧は108/2mmHgであった.インジウムシンチでは肺動脈閉塞部に一致して集積が認められた.治療法として肺動脈血栓内膜摘出術を考え気管支動脈造影を施行したが,気管支動脈を介して閉塞部より末梢の肺動脈は造影されず,手術成功率は低いと判断された. 不幸にも本症例は手術を待たずに死亡したが,剖検では左肺動脈主幹部に器質化した血栓を認め,末梢の肺動脈には内膜の細胞性増殖と中膜の肥厚など肺高血圧症の所見が認められた.病理所見上,肺血栓症と考えられた. 慢性肺血栓塞栓症に対し,インジウムシンチおよび気管支動脈造影を施行した報告は少なく,剖検例も少数である.本症例に対するわれわれの検討と,本疾患に対する診断,治療について若干の文献的考察を加えて報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.18.7_854