大腿骨頸部骨折例の入院時所見と退院時歩行能力の関係

【目的】 本研究では大腿骨頸部骨折症例の退院時歩行再獲得と,入院時所見の関係を検討することを目的とする. 【対象と方法】   2008年1月~2010年9月までに当センターに入院し,リハビリテーション科に依頼のあった大腿骨頸部骨折例のうち,受傷前に歩行可能であり,人工骨頭置換術または観血的整復固定術を施行した98例を対象とした.年齢は61歳から101歳(平均83.8±6.6歳)であり,平均理学療法期間は36.8±16.3日であった.脳血管疾患やパーキンソン病など歩行やADLに影響する疾患を有するもの,手術後免荷期間を必要としたものは除外した.入院時の年齢,性別,BMI,手術待機期間,入院時検査...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 69
Main Authors 熊木, 陽平, 緒方, 典子, 若林, 啓子, 江渕, 貴裕, 内山, 覚, 太田, 隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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Summary:【目的】 本研究では大腿骨頸部骨折症例の退院時歩行再獲得と,入院時所見の関係を検討することを目的とする. 【対象と方法】   2008年1月~2010年9月までに当センターに入院し,リハビリテーション科に依頼のあった大腿骨頸部骨折例のうち,受傷前に歩行可能であり,人工骨頭置換術または観血的整復固定術を施行した98例を対象とした.年齢は61歳から101歳(平均83.8±6.6歳)であり,平均理学療法期間は36.8±16.3日であった.脳血管疾患やパーキンソン病など歩行やADLに影響する疾患を有するもの,手術後免荷期間を必要としたものは除外した.入院時の年齢,性別,BMI,手術待機期間,入院時検査所見(ヘモグロビン濃度,血清総タンパク値,血清アルブミン値),受傷前歩行能力,認知機能(MMSE)を調査した.退院時に「介助を必要とせずに50m独力で歩行可能」であることを歩行再獲得の定義とし,杖や歩行器など補助具の使用は制限しないものとした.退院時に歩行を再獲得出来た群(歩行再獲得群)と歩行再獲得出来なかった群(歩行不能群)の2群に分類し,上記評価項目を比較した.統計手法は対応のないt検定,χ2検定を用い,有意水準は5%とした. 【結果】  退院時に「50m独力で歩行可能」であったものは69例(70.4%)であった. 両群間の比較で差を認めたものは,年齢(歩行再獲得群82.3±6.6歳,歩行不能群87.5±5.2歳,p<0.01),認知機能(歩行再獲得群24.8±6.1点,歩行不能群15.4±9.6点 p<0.01),骨折分類(p<0.01),ヘモグロビン値(歩行再獲得群11.5±18g/dl,歩行不能群10.5±1.9g/dl,p<0.02),血清アルブミン値(歩行再獲得3.7±0.5g/dl,歩行不能群3.5±0.4g/dl,p<0.05),受傷前屋外歩行能力(p<0.01)であった.また,性別,BMI,手術待機期間,血清総タンパク値には差を認めなかった. 【考察】 対象とした大腿骨頸部骨折例は,平均年齢83.8±6.6歳と高齢であり女性が多かった.入院時検査では,ヘモグロビン値11.2±1.9g/dl,血清総タンパク値6.8±0.6g/dl,血清アルブミン値3.7±0.5g/dlであり,市中高齢者と比較すると低栄養であった.低栄養は筋力低下,活動性低下,運動機能低下を誘発し,転倒リスクを引き上げるため注意が必要である.体格はBMI20.4と痩せの傾向を示しており,サルコペニアの存在を推察させる. 【結論】  退院時に歩行再獲得出来なかった症例は,高齢で,認知機能が低く,受傷前の活動性が低かった. 【倫理的配慮】 本研究はヘルシンキ宣言に沿って計画され,当センターの平成22年度院内研究課題審査にて承認され実施された.
Bibliography:O2-12-069
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.69.0