高齢者における最大一歩幅からみた自己身体運動の知覚能力

【はじめに】自己の身体運動の認識は重要であり,運動能力の知覚と実際の運動および環境の相互作用により表象される。今回,高齢者に対し最大一歩幅の測定を行い知覚と実際の運動の差を比較し,その要因および転倒の有無から分析を行った。 【方法】対象は特定高齢者8名(平均年齢71.1±7.4歳,過去1年間の転倒者4名)。最大一歩幅(以下SW)の測定は実際の一歩幅(以下ASW)と視覚的判断(以下PSW)の2つを計測した。ASWは立位より両足を揃えた状態から一歩をより前方に出し,また立位に戻すように指示した。左右にて3回計測し足尖から踵までの距離を測定した。PSWは跨ぐことができるか,できないかの2件法で判断し...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 73
Main Authors 豊田, 平介, 山城, 緑, 金枝, 芳明, 山本, 紘靖
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2007
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【はじめに】自己の身体運動の認識は重要であり,運動能力の知覚と実際の運動および環境の相互作用により表象される。今回,高齢者に対し最大一歩幅の測定を行い知覚と実際の運動の差を比較し,その要因および転倒の有無から分析を行った。 【方法】対象は特定高齢者8名(平均年齢71.1±7.4歳,過去1年間の転倒者4名)。最大一歩幅(以下SW)の測定は実際の一歩幅(以下ASW)と視覚的判断(以下PSW)の2つを計測した。ASWは立位より両足を揃えた状態から一歩をより前方に出し,また立位に戻すように指示した。左右にて3回計測し足尖から踵までの距離を測定した。PSWは跨ぐことができるか,できないかの2件法で判断した。跨ぐことができないと判断されたところを変換点として値をとった。分析方法は下肢長をLとするとπ=SW/LとしてASWとPSWの比較を行った。また転倒経験有無の影響をASWπ-PSWπを算出し検討した。運動機能評価(TUG,片脚立位,FR,10m歩行,長坐位前屈,FBS,Tinetti’sBMA,敏捷性,握力)を説明変数としてASWとPSWの要因分析を行い,影響度を検討した。なお参加者には今回の研究の説明を行い協力に関して同意を得た。 【結果】ASWπの平均は0.57±0.02,PSWπの平均は0.72±0.03で有意差が認められた(p<.01)。転倒経験による差の影響は認めなかった。要因分析ではASWの影響度が高い上位3項目としてFBS(6.32),TUG(3.9),FR(3.39)が抽出された。PSWではTinetti’sBMA(5.4),握力(-4.79),FBS(-3.81)が抽出された。 【考察】ASWとPSWのπ数に有意な差が認められ,PSWがASWを上回っていることを示し,実際の跨げる幅より大きい幅をできると知覚している。これは運動を行う際,自己身体における運動能力を過大評価しており,日常生活におけるリスクになると思われる。また転倒経験の有無による差は認められなかったことを考えると,特定高齢者は常に転倒のリスクがあると考えるのが妥当だと思われる。要因分析ではASWおよびPSWでは影響度が高い上位項目に相違があり,特異的な影響を示していると考えられる。ASWでは動的バランス指標が影響を示しており,各項目の改善によるASWの向上も考えられる。またPSWでは運動能力の知覚における参照変数となっているのかも知れない。今回ASWとPSWの結果よりリスク管理における簡便な指標になりえると思われる。運動療法を行う上で自己身体からのアフォーダンスを基に環境との相互作用可能な身体形成が必要だと考える。
Bibliography:73
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.26.0.73.0