片側唇顎裂に対する歯肉骨膜形成術

本邦では上顎の成長発育に対する影響を懸念し,多くの施設で乳幼児期に顎裂部への手術的侵襲を避けてきた.われわれは,片側唇顎裂に対して,顎裂幅に関わらず歯肉骨膜形成術(Gingivoperiosteoplasty以下GPP)を口唇形成術と同時に行い,5歳時の骨形成をCTで評価し,顎裂幅と骨形成との関連を検討した.対象および方法:1999年9月より2003年2月までの期間に口唇形成術を施行した片側唇顎裂18例(手術時年齢:2カ月~6カ月,平均3.5カ月).初回の口唇形術時に顎裂の幅に依存せず,全例GPPを施行した.術前後に顎模型,口腔内写真,3D-Computed Tomography(CT)撮影を...

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Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 33; no. 1; pp. 34 - 41
Main Authors 小林, 眞司, 木島, 毅, 安村, 和則, 前川, 二郎, 山本, 康, 府川, 俊彦, 平川, 崇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 30.04.2008
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ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate1976.33.1_34

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Summary:本邦では上顎の成長発育に対する影響を懸念し,多くの施設で乳幼児期に顎裂部への手術的侵襲を避けてきた.われわれは,片側唇顎裂に対して,顎裂幅に関わらず歯肉骨膜形成術(Gingivoperiosteoplasty以下GPP)を口唇形成術と同時に行い,5歳時の骨形成をCTで評価し,顎裂幅と骨形成との関連を検討した.対象および方法:1999年9月より2003年2月までの期間に口唇形成術を施行した片側唇顎裂18例(手術時年齢:2カ月~6カ月,平均3.5カ月).初回の口唇形術時に顎裂の幅に依存せず,全例GPPを施行した.術前後に顎模型,口腔内写真,3D-Computed Tomography(CT)撮影を行い顎裂部の状態を評価し,その後の二次的顎裂部骨移植(Secondary bone graft以下SBG)の適否につきretrospectiveに検討した.結果:1.術後における合併症(乳歯萌出阻害,感染,出血など)は認めなかった.2.GPPによりSBGを回避できた症例は10/18(55.6%)であった.3.顎裂幅(a-a')が5mm以下の症例は良好な骨形成能を認めたが,6mm以上の症例はSBGを回避するに十分な骨形成が認められない傾向にあった.考察:顎裂6mm以上の症例で,骨形成が不十分であり,術前に顎裂部を狭小化するような顎矯正が必要であると思われた.たとえ骨形成が不十分な症例でも,すでに骨膜は修復されているため,その後のSBGが容易になることが推測された.SBGを回避できるGPPは,有効な手段であり,今後本邦においても普及していくものと考えられた.
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate1976.33.1_34