尿路症状により発見された悪性 Gartner 管腫瘍の1例

子宮広間膜内 Gartner 管起源の膀胱へ浸潤した腺癌の1例を報告する. 症例は63歳の女性で, 発熱, 血膿尿および頻尿を主訴として来診, 尿検査でE. coli による尿路感染症のほかに剥離細胞診で class V が検出された. 膀胱鏡で右側方から腫瘍による膀胱壁の圧迫所見が認められた. DIPで上部尿路に異常はなかったが, 膀胱造影で膀胱の右上方に陰影欠損がみられた. 骨盤動脈造影で右内腸骨動脈から分枝する嚢腫様血管像と一部 puddling, pooling 像が検出された. CT像は cystic mass が膀胱壁に広く接している所見が認められた. 以上から子宮広間膜内に発生し...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 76; no. 1; pp. 104 - 109
Main Authors 谷川, 龍彦, 植田, 覺, 野村, 芳雄, 緒方, 二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1985
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:子宮広間膜内 Gartner 管起源の膀胱へ浸潤した腺癌の1例を報告する. 症例は63歳の女性で, 発熱, 血膿尿および頻尿を主訴として来診, 尿検査でE. coli による尿路感染症のほかに剥離細胞診で class V が検出された. 膀胱鏡で右側方から腫瘍による膀胱壁の圧迫所見が認められた. DIPで上部尿路に異常はなかったが, 膀胱造影で膀胱の右上方に陰影欠損がみられた. 骨盤動脈造影で右内腸骨動脈から分枝する嚢腫様血管像と一部 puddling, pooling 像が検出された. CT像は cystic mass が膀胱壁に広く接している所見が認められた. 以上から子宮広間膜内に発生した悪性 Gartner 管腫瘍の膀胱浸潤と考え手術を行なったが, 周囲組織への浸潤強く摘出は不可能で腫瘤の一部生検を行ない, 組織学的に mesonephric adenocarcinoma と診断された. FT-207, MMCの投与とコバルト照射を施行し, 超音波学的にいちじるしい腫瘍の縮小をみたものの悪液質に肺炎を併発し死亡した. mesonephric adenocarcinoma は比較的稀であり, 膀胱への浸潤をみて初めて発見された症例はこれまで全くない.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.76.1_104