片側性唇顎口蓋裂症例における上顎歯列弓の狭窄と拡大後の後戻りの経過
口蓋形成術後に見られる上顎歯列弓の狭窄は,混合歯列期に拡大しても永久歯列期までに後戻りすることが多い。どの様な症例で後戻りが起こりやすいかを明らかにするために,拡大前の上顎歯列弓の狭窄と拡大後の後戻りの経過との関連を調査した。対象は,鹿児島大学歯学部附属病院で口唇形成術と口蓋形成術を受けた片側性唇顎口蓋裂症例のうち,混合歯列期に片側あるいは両側の側方歯群に逆被蓋があり,クワドヘリックス(QH)を用いて上顎歯列弓を拡大し,QH撤去後から次の矯正装置装着までに2年以上の経過を追跡できた20名である。 QH装着前の上顎歯列弓を,両側segmentが弧状で対称的なA型,患側segmentが口蓋側へ狭窄...
Saved in:
Published in | 日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 28; no. 1; pp. 41 - 51 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口蓋裂学会
30.04.2003
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0386-5185 2186-5701 |
DOI | 10.11224/cleftpalate1976.28.1_41 |
Cover
Summary: | 口蓋形成術後に見られる上顎歯列弓の狭窄は,混合歯列期に拡大しても永久歯列期までに後戻りすることが多い。どの様な症例で後戻りが起こりやすいかを明らかにするために,拡大前の上顎歯列弓の狭窄と拡大後の後戻りの経過との関連を調査した。対象は,鹿児島大学歯学部附属病院で口唇形成術と口蓋形成術を受けた片側性唇顎口蓋裂症例のうち,混合歯列期に片側あるいは両側の側方歯群に逆被蓋があり,クワドヘリックス(QH)を用いて上顎歯列弓を拡大し,QH撤去後から次の矯正装置装着までに2年以上の経過を追跡できた20名である。 QH装着前の上顎歯列弓を,両側segmentが弧状で対称的なA型,患側segmentが口蓋側へ狭窄したB型,両側segmentが直線的で八の字状に狭窄したC型に分類した。QH装着前,QH撤去時及びQH撤去後1年間隔の第一乳臼歯部及び第一大臼歯部の歯列弓幅径と歯槽基底弓幅径(CD,BDとC6,B6)を計測し,それぞれの後戻り率の経過を比較した。CDとBDの後戻り率は,A型ではQH撤去1年後に23.5-80.0%となり2年以降でも33.4-80.o%であるが,B型とC型では1年後に3.4-100%,2年以降では37.9-100%と大きかった。また,C6とB6の後戻り率は,A型では1年後も2年以降でも0-46.5%であったが,B型とC型では1年後に30.4-100%となり,2年以降にはB型で42.7-100%,C型で68.4~100%と大きかった。以上から,CDとBDの後戻り率はA型では2年以降でも最大80.O%であるが,B型とC型では1年後で最大100%となり,また,C6とB6の後戻り率もA型で2年以降に最大46.5%であったがB型とC型では1年後に最大100%となりA型に比べて大きいことが示された。 |
---|---|
ISSN: | 0386-5185 2186-5701 |
DOI: | 10.11224/cleftpalate1976.28.1_41 |