Timed Up and Go Testが持つバランス構成要素の検討~Balance Evaluation Systems Testを使用して

【目的】 バランス能力は日常生活を送る上で重要な能力で,その評価にはBerg Balance ScaleやTimed Up and Go Test(TUG)等が広く用いられている.TUGは簡便で総合的なバランス能力を評価でき,転倒に対するカットオフ値を述べた文献も多く報告されているが,TUGの評価出来るバランス構成要素は明白でない.Horakらはバランス能力を1.生体力学的制限,2.安定限界/垂直性,3.予測的姿勢制御,4.姿勢制御,5.感覚適応,6.歩行安定性という6つの構成要素として捉えた,Balance Evaluation Systems Test(BESTest)を開発した.本研究の...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 255
Main Authors 平石, 武士, 宮田, 一弘, 小林, 正和, 小泉, 雅樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
Subjects
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_255

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Summary:【目的】 バランス能力は日常生活を送る上で重要な能力で,その評価にはBerg Balance ScaleやTimed Up and Go Test(TUG)等が広く用いられている.TUGは簡便で総合的なバランス能力を評価でき,転倒に対するカットオフ値を述べた文献も多く報告されているが,TUGの評価出来るバランス構成要素は明白でない.Horakらはバランス能力を1.生体力学的制限,2.安定限界/垂直性,3.予測的姿勢制御,4.姿勢制御,5.感覚適応,6.歩行安定性という6つの構成要素として捉えた,Balance Evaluation Systems Test(BESTest)を開発した.本研究の目的はBESTestを使用してTUGの持つバランス構成要素を調査する事である. 【方法】 対象者には事前に本研究の説明の同意を口頭と書面で得た.対象は当院に入院,通院中に歩行が監視又は自立であった者84名(男性38名,女性36名,平均年齢73.2<±>12.4歳)とした.内訳は脳血管疾患患者32名,骨折患者30名,その他22名.歩行自立度の内訳は歩行監視19名,歩行自立 65名であった.測定項目はBESTest,TUGとした.TUGが評価出来るバランス構成要素を検討する為,従属変数をTUG,独立変数をBESTestの各セクションとし重回帰分析を実施.有意水準は5%とした. 【結果】 TUG,BESTestの各セクションの平均値はTUG:13.3<±>9.5秒,BESTest:セクション1:71.1<±>20.2%,セクション2:81.1<±>11.5%,セクション3:67.0<±>20.6%,セクション4:70.0<±>23.4%,セクション5:85.9<±>14.9%,セクション6:70.1<±>19.6%であった.重回帰分析の結果,選択された因子はセクション6,5,1,2で,標準化係数,優位確率は順に-0.122,0.018/-0.156,0.018/-0.109,0.033/-0.158,0.047であった.調整済みR2乗値は0.574,有位確率は5%未満,F値は28.927.重回帰式はY=(-0.122・セクション6)+(-0.156・セクション5)+(-0.109・セクション1)+(-0.158・セクション2)+55.966. 【考察】 TUGは,課題遂行時間と歩容にて評価するバランス検査であるとされる.セクション1は股・足関節の筋力,床からの立ち座りを評価する事から立ち座りを行うTUGとの関係が考えられる.セクション2は座位での体幹の傾き,立位での左右へのリーチ等の検査で,重心の側方移動に対する安定性が評価され,TUG等に関係すると考えられる.セクション5は不整地での立位保持の評価で,足底からの固有感覚や振動覚を手がかりに歩行中の平衡機能を保持する事から関係が考えられる.セクション6は歩行能力の評価であり,当然TUGとの関係は強いと考えられる.以上の事からTUGはBESTestで示す生体力学的制限,安定限界/垂直性,姿勢制御,感覚適応,歩行安定性等のバランス構成要素と関係の強い事が示唆された.
Bibliography:255
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_255