胸椎破裂骨折を受傷し立位保持獲得に難渋した一症例

【はじめに】 腰椎疾患の症状は腰下肢痛など多彩であるが,ときに下垂足を伴う事がある.背屈筋群は足関節ストラテジーとして後方への外乱に対する姿勢制御の役割を担い,その筋力低下は立位バランス機能を低下させる(重島,2010).下垂足の機能予後に関しては,麻痺の回復は術後2年間期待できるといわれている(青野,2010).また,前脛骨筋(以下TA)回復率に影響する因子は,年齢,糖尿病,馬尾症状合併の有無,術前下肢痛の程度に有意差を認めたと報告されている(高森ら,2009).今回,Th12破裂骨折により右下垂足や下肢痛を呈し,立位保持に難渋した一症例を経験したので,考察を加え報告する.なお,本人には説明...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 135
Main Authors 大塚, 翔子, 加藤木, 丈英, 齋藤, 義雄, 田中, 優路, 白井, 智裕, 小谷, 俊明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_135

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Summary:【はじめに】 腰椎疾患の症状は腰下肢痛など多彩であるが,ときに下垂足を伴う事がある.背屈筋群は足関節ストラテジーとして後方への外乱に対する姿勢制御の役割を担い,その筋力低下は立位バランス機能を低下させる(重島,2010).下垂足の機能予後に関しては,麻痺の回復は術後2年間期待できるといわれている(青野,2010).また,前脛骨筋(以下TA)回復率に影響する因子は,年齢,糖尿病,馬尾症状合併の有無,術前下肢痛の程度に有意差を認めたと報告されている(高森ら,2009).今回,Th12破裂骨折により右下垂足や下肢痛を呈し,立位保持に難渋した一症例を経験したので,考察を加え報告する.なお,本人には説明と同意を得ている. 【症例紹介】 77歳男性.2010年4月12日腰部脊柱管狭窄症に対して腰椎後方固定術(L2-5)施行.2011年3月30日第5腰椎椎間板ヘルニアに対して固定延長術(Th12-L5)施行.4月22日第12胸椎圧迫骨折を受傷,軽度右下垂足出現し,入院となる.5月9日圧迫骨折が破裂骨折となり,床上安静となる.17日右下垂足増悪,30日に固定延長術(Th8-12)施行. 【評価及び理学療法経過】 6月2日よりOPE後理学療法を開始.初期評価(6月8日)では,右下肢荷重時に右L5~S1領域に疼痛(NRS7~8/10)・痺れが見られた.表在・深部感覚には異常無し.著明な可動域制限は無く,MMTは両大殿筋・中殿筋(以下GM)2,右大腿四頭筋3,左4,右TA・長母趾伸筋(以下EHL)1,左3,両下腿三頭筋2,両足趾屈筋2であった.反射検査は異常無し.立位は困難であり,平行棒内にて両上肢で支持をすれば可能.理学療法では,下肢・体幹筋力低下に対して筋力増強訓練,右下肢の疼痛に対しては電気療法や温熱療法を施行.右下垂足に対してはEMSを使用してTA収縮の促通,TAバランス反応を誘発した立位バランス訓練を行った.また,SHBを使用した.最終評価(7月19日)時,疼痛・痺れは変化無し.MMTは左大殿筋3,右大腿四頭筋4,左5,右TA・EHL2と軽度筋力向上が見られた.立位保持は1分間程度であれば自立可能となった. 【考察】 今回,下垂足と右下肢痛に着目して介入した.TA・GMの麻痺と右下肢痛の原因としては,破裂骨折による神経損傷が考えられた.理学療法の結果,軽度の下肢・体幹筋力向上と麻痺の回復は図れたが,著明な向上は見られなかった.さらに,下肢痛に関しては回復が図れず,最終評価の時点でも疼痛が残存し,1分間以上の立位保持は困難であった.安静臥床で初期には1週間で10~15%の筋力低下をきたし,こうした筋力低下の回復には安静期間の2~3倍の運動期間が必要といわれている(佐久間,2005).本症例では介入期間が短かった為,廃用性筋力低下が主要問題となり,立位保持獲得に難渋したと考えた.
Bibliography:135
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_135