脳卒中急性期におけるPusher現象に対するロボットスーツHAL福祉用の有効性の検討

【目的】 当院では脳卒中急性期よりロボットスーツHAL福祉用(以下,HAL)を使用している.今回単脚HALの自律制御モードがPusher現象の軽減と立ち上がり動作の能力向上に有効であるかを知ることを目的とした. 【方法】 対象は脳血管障害によるPusher現象のみられた8症例で,全症例とも左半球損傷(脳梗塞3例,脳内出血5例)による重度右片麻痺を呈していた.全症例ともPusherの重症度はContraversive pushing臨床評価スケールで6(最重度)であった.発症から単脚HAL導入までの期間は平均29.8日であった.なお症例に対してはヘルシンキ宣言に従って同意を得た. 方法は,平行棒...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 183
Main Authors 水上, 昌文, 鎌倉, みず穂, 和田, 祥平, 鳥谷, 将由, 居村, 茂幸, 黒澤, 保壽, 堅田, 明靖, 西潟, 亘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_183

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Summary:【目的】 当院では脳卒中急性期よりロボットスーツHAL福祉用(以下,HAL)を使用している.今回単脚HALの自律制御モードがPusher現象の軽減と立ち上がり動作の能力向上に有効であるかを知ることを目的とした. 【方法】 対象は脳血管障害によるPusher現象のみられた8症例で,全症例とも左半球損傷(脳梗塞3例,脳内出血5例)による重度右片麻痺を呈していた.全症例ともPusherの重症度はContraversive pushing臨床評価スケールで6(最重度)であった.発症から単脚HAL導入までの期間は平均29.8日であった.なお症例に対してはヘルシンキ宣言に従って同意を得た. 方法は,平行棒を支持した立ち上がり・立位保持を補装具を使用せずに5回行った後,対象に右単脚HALを装着し同様に立ち上がり・立位保持を20回行った.HALの設定は膝関節・股関節ともに自律制御モードにし,介助を行いながらインターフェースユニットを操作し立ち上がりと同時にSTANDモードに,着座と同時にNO TASKに切り替えた.立ち上がり・立位保持練習は全てビデオカメラで撮影し動画及び静止画像に処理した.HAL装着前,中,後ともにPusher現象が最軽度であったものを比較し,1.平行棒内立位姿勢での体軸(左右の上前腸骨棘を結ぶ線の中央と胸骨柄上端を通る線)の傾斜,2.平行棒内立位姿勢での頸部の立ち直り,3.セラピストの感じた主観的な介助量の変化の3項目を評価項目とした. 【結果】 1.体軸は鉛直軸とのなす角で示し,8症例の装着前傾斜角は平均9.6°(5~15°)右へ偏位し,装着中は平均4.5°(1~11°)右偏位,装着後は3.8°(2~10°)右偏位であった.2.頸部の立ち直りがみられなかった7症例のうち4症例に装着中に立ち直りがみられ,装着後も持続してみられた.3.介助量は全症例において軽減し,中等度介助から軽介助が3例,重度介助から見守りが1例,中等度介助には変化はないが介助量が軽減した例が4例であった. 【考察】 重度のPusher現象を認める例は運動麻痺も重度である印象があり,垂直軸認知障害に加えて非麻痺側の上下肢においても出力のコントロール能力が低下していると思われる.HALによる自律的な動きにより正常に近い立ち上がり動作が行え,さらに麻痺側下肢の支持性を補うことで非麻痺側の出力のコントロールスキルが向上しPusher現象が軽減したと考える.しかし発症より約30日経過した時点でのHAL導入であったため,自然回復も考慮し今後も検討が必要である. 【まとめ】 脳卒中急性期おいてHALの自律制御モードによる立ち上がり・立位保持練習は,Pusher現象の軽減と立ち上がり動作の能力向上に有効である可能性があることが示唆された.
Bibliography:183
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_183