頭蓋内血管狭窄率に着目した急性期アテローム血栓性梗塞患者の早期離床の検討
【目的】 急性期脳梗塞患者の姿勢変化は,脳内の血行動態に影響を及ぼすとされており,特に主幹動脈狭窄を有するアテローム血栓性梗塞患者の離床は慎重に実施される傾向がある.そこでアテローム血栓性梗塞患者の早期離床を安全に行うために,本研究ではMRAでの頭蓋内血管狭窄所見の程度に着目して離床時の血圧変化や神経症候増悪の有無について検討した. 【方法】 2009年3月から2011年2月に急性発症し発症後3日以内に当院に入院したアテローム血栓性梗塞患者73名のうち,ベッドアップコースを使用して離床を図った53名を対象とした.入院中に実施されたMRAにおいて脳卒中専門医により頭蓋内血管狭窄率(椎骨動脈,脳底...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 8 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2011
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.30.0.8.0 |
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Summary: | 【目的】 急性期脳梗塞患者の姿勢変化は,脳内の血行動態に影響を及ぼすとされており,特に主幹動脈狭窄を有するアテローム血栓性梗塞患者の離床は慎重に実施される傾向がある.そこでアテローム血栓性梗塞患者の早期離床を安全に行うために,本研究ではMRAでの頭蓋内血管狭窄所見の程度に着目して離床時の血圧変化や神経症候増悪の有無について検討した. 【方法】 2009年3月から2011年2月に急性発症し発症後3日以内に当院に入院したアテローム血栓性梗塞患者73名のうち,ベッドアップコースを使用して離床を図った53名を対象とした.入院中に実施されたMRAにおいて脳卒中専門医により頭蓋内血管狭窄率(椎骨動脈,脳底動脈,上小脳動脈,内頸動脈,前・中・後大脳動脈)を判定し,閉塞または狭窄率75%以上の高度狭窄を有する高度狭窄群25名と,狭窄を認めないか狭窄率75%未満の軽度狭窄群28名の2群に割り付けた.また後方視的に入院中の頸動脈エコー検査における内頸動脈狭窄率を抽出し,狭窄率が75%以上の患者の割合を算出した.2群において年齢,入院時NIHSS,発症から離床(端座位)までの日数,初期評価時および退院時Barthel Index(以下BI),在院日数,自宅復帰率,離床時(安静臥位,端座位直後,端座位5分後)の血圧変化,離床訓練時における神経症候増悪の有無を検討した.分析はJMPを使用し,一元配置分散分析,χ2検定を有意水準5%未満で行った.この研究はヘルシンキ宣言に沿って行い,得られたデータは匿名化し個人情報が特定できないよう配慮した. 【結果】 頸動脈エコーで75%以上の有意狭窄を有する患者の割合は,高度狭窄群22.7%と軽度狭窄群3.8%で有意差を認めた.2群間で年齢,発症から離床までの日数,初期評価時および退院時BI,在院日数に有意差を認めなかった.入院時NIHSSは高度狭窄群10.5±12.8点が軽度狭窄群3.1±3.9点より有意に高値を示し,自宅復帰率は高度狭窄群52.0%が軽度狭窄群82.1%より有意に低値を示した.各群内での離床時の血圧変化について,軽度狭窄群の安静臥位と比較して端座位直後の拡張期血圧で有意な低下を認めた以外は有意差を認めなかった.離床時における神経症候増悪例は2群ともに1例も認めなかった. 【考察】 一般的に主幹動脈狭窄を認める患者の離床は慎重に行う傾向があるが,MRAや頸動脈エコーに高度狭窄を認めたり重症度の高い患者でも,血圧変化や神経症候の増悪を認めずに早期離床が可能であることが示唆された.今後は検討症例数を増やしたり客観的血管評価による狭窄率分類での検討が必要である. 【まとめ】 当院での急性期アテローム血栓性梗塞患者の早期離床は,MRAにて高度狭窄を有しており重症度の高い場合でも比較的安全に行えている. |
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Bibliography: | O1-2-008 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.30.0.8.0 |