片麻痺者の歩行パターンにおける歩行時の下肢筋活動の特徴

【背景・目的】 脳卒中片麻痺者の歩行分類で,Qurevainらは麻痺側立脚期に膝が伸展する歩行(以下,膝伸展パターン)や麻痺側立脚期に膝が屈曲する歩行(以下,膝屈曲パターン)が主に低速度歩行の患者で認められることを報告している。これらは臨床でも多くみられることから片麻痺者の歩行の特徴のひとつと言える。また,Nadeauらは足関節などの遠位部が近位部と比較し筋力低下の割合が大きいこと,Muloreyらは足関節底屈筋の筋活動の不足により下腿の制御が乏しくなること報告しており,歩行時の足関節の筋活動が前述した歩行パターンに影響すると考えられる。しかし,歩行パターンに着目し歩行時の足関節の筋活動の特徴...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 223
Main Authors 田中, 惣治, 打越, 健太, 清野, 昂太, 吉葉, 崇, 山本, 澄子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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Summary:【背景・目的】 脳卒中片麻痺者の歩行分類で,Qurevainらは麻痺側立脚期に膝が伸展する歩行(以下,膝伸展パターン)や麻痺側立脚期に膝が屈曲する歩行(以下,膝屈曲パターン)が主に低速度歩行の患者で認められることを報告している。これらは臨床でも多くみられることから片麻痺者の歩行の特徴のひとつと言える。また,Nadeauらは足関節などの遠位部が近位部と比較し筋力低下の割合が大きいこと,Muloreyらは足関節底屈筋の筋活動の不足により下腿の制御が乏しくなること報告しており,歩行時の足関節の筋活動が前述した歩行パターンに影響すると考えられる。しかし,歩行パターンに着目し歩行時の足関節の筋活動の特徴を明らかにした報告はない。そこで本研究は,片麻痺者の歩行時の筋活動を調査し,歩行パターン別に共通した特徴があるか検証することを目的とした。 【方法】  対象は回復期入院中で裸足での歩行が可能な片麻痺者6名(男性のみ,年齢50.0±11.3歳)である。下肢のBRSはⅢ:2名,Ⅳ:2名,Ⅴ:1名,Ⅵ:1名で麻痺側は右3名,左3名。歩行パターンは先行研究にならい目視により分類し,膝伸展パターン4名,膝屈曲パターン2名であった。計測は10mの歩行路を自由速度の歩行を行った。歩行時の筋活動は表面筋電計WEB-5500(日本光電社製)を用いて測定し,被験筋は前脛骨筋と腓腹筋とした。併せて,矢状面からビデオカメラで歩行を撮影し,得られた映像データを動画解析ソフトDART FISH SOFTWAREを用いて歩行の相分けを行った。なお,本研究は国際医療福祉大学倫理委員会(承認番号11-47)の承認を得た後,ヘルシンキ宣言にのっとり口頭・文書にて対象者に説明し同意を得て実施した。 【結果】  膝伸展パターンの歩行では,健常者でみられる荷重応答期(以下,LR)の前脛骨筋の筋活動ピークが共通して認められなかった。腓腹筋の筋活動は比較的大きく活動するが,4名のうち2名は特にLRで腓腹筋の筋活動ピークを認めた。一方,膝屈曲パターンの歩行ではLRにおける前脛骨筋の筋活動ピークは認められたが,健常者でみられる立脚中期(以下,Mst)の腓腹筋の筋活動ピークが認められなかった。 【考察】 膝伸展パターンを示す片麻痺者において,LRの前脛骨筋の筋活動が生じないため下腿が前傾せず膝が伸展する歩行となった。一方,膝屈曲パターンを示す片麻痺者はLRで前脛骨筋の筋活動は生じるが,Mstの腓腹筋の筋活動が低下し下腿の前傾を制御できず膝が屈曲する歩行となった。以上から,片麻痺者の歩行パターンにより足関節の筋活動が異なる傾向が示唆され,理学療法評価や治療に応用できる知見が得られた。
Bibliography:223
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_223