ピッツバーグにおける小児小腸移植の現況 移植成績を中心に

トーマススターツル移植施設における, 免疫抑制剤タクロリムスを使用した1990年から1998年までの小児小腸移植64例68回の患者とグラフト生存, 拒絶反応などの成績について報告する.小腸不全の内訳は腸捻転 (n= 18), 腹壁破裂 (n= 16), 腸閉鎖 (n= 8), 壊死性腸炎 (n= 7), 腸管偽閉塞症 (n= 6), ヒルシュプルング病 (n=4), microvillous inclusion disease (n= 3), ポリポーシス (n= 1) および外傷 (n= 1) であった.移植手術は, 小腸単独移植 (n= 19), 肝小腸複合 (n= 39) および多臓器移...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 49; no. 1; pp. 25 - 32
Main Authors 石井, 智博, 大和田, 進
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.01.1999
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1343-2826
1881-1191
DOI10.2974/kmj.49.25

Cover

More Information
Summary:トーマススターツル移植施設における, 免疫抑制剤タクロリムスを使用した1990年から1998年までの小児小腸移植64例68回の患者とグラフト生存, 拒絶反応などの成績について報告する.小腸不全の内訳は腸捻転 (n= 18), 腹壁破裂 (n= 16), 腸閉鎖 (n= 8), 壊死性腸炎 (n= 7), 腸管偽閉塞症 (n= 6), ヒルシュプルング病 (n=4), microvillous inclusion disease (n= 3), ポリポーシス (n= 1) および外傷 (n= 1) であった.移植手術は, 小腸単独移植 (n= 19), 肝小腸複合 (n= 39) および多臓器移植 (n= 10) であった.現在まで33グラフトが生存しており, 5年の患者とグラフト生存は59%および53%であった.年齢別のグラフト5年生存率は2歳未満43%で, 10歳以上が89%と最も良好であった.小腸単独, 肝小腸複合と多臓器移植の5年グラフト生存は67%, 46%と35%であった.小腸の急性拒絶反応は100%, 肝臓のそれは38%にみられ, 一か月以内の拒絶反応は小腸80%, 肝臓14%であった.ステロイド抵抗性の拒絶反応によるOKT3の投与は小腸単独に多かった.グラフト摘出は10例で.原因は拒絶7例, 膵炎, PTLD (posttransplant lymphoproliferative disease) と肝動脈血栓症が各々1例であった.再移植は計5例で, 3例は拒絶や敗血症, PTLDで死亡した.Graftversus-host disease (GVHD) は10例に発生し, この内3例は拒絶によるグラフト摘出後に見られた.Exfoliative拒絶は12例, 14グラフトにみられ, 8人が死亡し, 10グラフトが喪失した.グラフト喪失は36例 (52%) にみられ, 原因は急性拒絶9例, PTLD9例, 手術手技的合併症6例, 感染と敗血症7例, 拒絶とPTLD3例, 膵炎と不明が各1例であった.現在, 33例中31例 (94%) のグラフトが経口摂取のみで生存している. 小腸移植は腎, 肝, 心移植と較べ, 手術合併症や高頻度, 高度の拒絶反応により, 患者やグラフト生存も不良であるが, 現状では, TPN合併症を有する不可逆性小腸不全症の唯一の治療法である.しかし, 拒絶反応に対する過剰な免疫抑制はEBV感染症を招きPTLDの誘因となり, 逆に過小な免疫抑制で拒絶やrebound拒絶を引き起こす, 非常に安全域の狭い実験段階の治療である.
ISSN:1343-2826
1881-1191
DOI:10.2974/kmj.49.25