体験型安全教育の実施と展望

近年,安全に制御された環境下にて不安全行動を体験し,その危険性の学習を図る体験型の安全教 育が注目されている.本論文は,その有効性について消防士を対象に実践した研究結果を基に,安全 教育研究の諸問題や展望について議論するものである.本論文にて取り上げた安全教育は,PC ベース にて不安全行動を体験可能であり,そのメカニズムの解説や事故事例の紹介を行う「エラー体験プロ グラム」(臼井, 2008)であった.特に本論文では,プログラムの実践報告(森泉ら, 2014)での問題を 踏まえ,教育の内容評価に主に焦点を当てた.結果,エラー体験プログラムは教育内容の理解や態度 変容を適切にもたらす可能性が示...

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Published in日本信頼性学会誌 信頼性 Vol. 39; no. 6; pp. 334 - 341
Main Authors 森泉, 慎吾, 臼井, 伸之介, 和田, 一成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本信頼性学会 2017
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Summary:近年,安全に制御された環境下にて不安全行動を体験し,その危険性の学習を図る体験型の安全教 育が注目されている.本論文は,その有効性について消防士を対象に実践した研究結果を基に,安全 教育研究の諸問題や展望について議論するものである.本論文にて取り上げた安全教育は,PC ベース にて不安全行動を体験可能であり,そのメカニズムの解説や事故事例の紹介を行う「エラー体験プロ グラム」(臼井, 2008)であった.特に本論文では,プログラムの実践報告(森泉ら, 2014)での問題を 踏まえ,教育の内容評価に主に焦点を当てた.結果,エラー体験プログラムは教育内容の理解や態度 変容を適切にもたらす可能性が示唆された.本研究を含め,安全教育においては,有効性の判断材料 となる指標(ex. 教育前後の態度)の適切さ,教育内容の評価における社会的望ましさの影響,教育効 果のなかったプログラムが報告されにくいという公表バイアスなど,考慮するべき問題が多い.今後 の展望として,蓄積された研究成果の統合および整理を図るような安全教育研究の実施が期待される.
ISSN:0919-2697
2424-2543
DOI:10.11348/reajshinrai.39.6_334