長期療養患者における股関節および膝関節可動域制限

【目的】関節可動域制限は臨床上最も多く経験する機能障害であり、介護療養型医療施設である当院では、他病院・他施設より転院された時点にて、すでに可動域制限を有する症例が多数みられる。臨床場面で股関節伸展制限を有する場合、膝関節伸展制限も伴うことが多い。また、股関節内旋制限があると膝関節伸展制限を伴う症例が多くみられる。このように股関節の可動域制限の発現様式と膝関節可動域制限の発現様式には一定の組み合わせが存在すると考えられる。しかし、股関節および膝関節の発現様式の関係についての疫学的調査はあまり見受けられない。そこで、股関節および膝関節可動域制限の関係を明らかにする目的で、当院の長期療養患者の股関...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 27; p. 2
Main Authors 安藤, 正志, 大森, あゆみ, 杉田, 有希, 塚本, 泰章, 岡野, 智, 関口, 賢人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2008
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.27.0.2.0

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Summary:【目的】関節可動域制限は臨床上最も多く経験する機能障害であり、介護療養型医療施設である当院では、他病院・他施設より転院された時点にて、すでに可動域制限を有する症例が多数みられる。臨床場面で股関節伸展制限を有する場合、膝関節伸展制限も伴うことが多い。また、股関節内旋制限があると膝関節伸展制限を伴う症例が多くみられる。このように股関節の可動域制限の発現様式と膝関節可動域制限の発現様式には一定の組み合わせが存在すると考えられる。しかし、股関節および膝関節の発現様式の関係についての疫学的調査はあまり見受けられない。そこで、股関節および膝関節可動域制限の関係を明らかにする目的で、当院の長期療養患者の股関節、膝関節の可動域制限を調査した。 【対象と方法】対象は当院で過去1年間に理学療法を受けた入院患者63名、平均年齢は78±11歳であった。主疾患名は中枢疾患39名、整形疾患21名、内科系疾患17名であり複数の疾患を重複して有する症例が20名、発症からの期間は平均8年1ヶ月であった。 理学療法介入前に測定された左右股、膝関節の関節可動域を理学療法診療録より調査し、制限の強い側を代表値とした。なお可動域測定は当院の理学療法士が日本リハビリテーション医学会評価基準委員会により、提唱された「関節可動域表示ならびに測定法」を基準に行った。統計処理はピアソンの相関分析および一次回帰分析を使用した。これらの数値を本研究に使用することに対し、本人もしくは家族に同意を得た。 【結果】股関節伸展と膝関節伸展制限の可動域の比較では有意な強い相関(r=0.86)があった。股関節屈曲と膝屈曲制限(r=0.50)、股関節外転と膝伸展制限(r=0.48)に有意な相関がみられた。股関節外旋と膝屈曲制限(r=0.32)に有意な相関がみられた。他の制限方向の組み合わせでは有意な相関はみられなかった。 【考察】股関節伸展と膝関節伸展制限、また股関節屈曲と膝関節屈曲制限に有意な相関があった。これはポジショニングの肢位や長時間の安楽肢位により発生した股関節の可動域制限が膝関節の制限を助長していると考えられる。臨床場面で股関節内旋可動域制限があると膝伸展制限を伴う症例が多くみられるが、本研究では股関節内旋と膝関節伸展制限の相関はみられなかった。これは定時間毎に行われる徹底されたポジショニング等により股関節外旋位への予防がなされていたことが原因と考えられる。 本研究の結果、股関節伸展制限があると膝関節伸展制限も発現しやすいことが、また股関節屈曲制限があると膝関節屈曲制限も発現しやすいことが明らかとなった。
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ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.27.0.2.0