高温超伝導体物性研究の進展

1991年度に発見された新超伝導物質のなかで,最も注目を集めているのはMxC60であるが,この非酸化物の超伝導は,銅酸化物の超伝導とは大きく異なっているようである.銅酸化物超伝導体に関しては,常伝導のフェルミ準位付近の電子状態の理解が,実験的にも理論的にもかなり収束してきた.強い電子相関の重要性は広く認識され,すでに常識化したようである.その結果,高温超伝導に対する反強磁性的スピン相関のかかわりが盛んに議論されているが,一方では,酸化物における格子の不安定性やフォノンとの関連についても報告が多い.超伝導キャリアについては,d波電子対を支持する議論が再び出てきた.いよいよ高温超伝導の機構解明と,...

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Published in応用物理 Vol. 61; no. 5; pp. 444 - 455
Main Authors 藤田, 敏三, 前野, 悦輝, 中村, 文彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 応用物理学会 1992
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Summary:1991年度に発見された新超伝導物質のなかで,最も注目を集めているのはMxC60であるが,この非酸化物の超伝導は,銅酸化物の超伝導とは大きく異なっているようである.銅酸化物超伝導体に関しては,常伝導のフェルミ準位付近の電子状態の理解が,実験的にも理論的にもかなり収束してきた.強い電子相関の重要性は広く認識され,すでに常識化したようである.その結果,高温超伝導に対する反強磁性的スピン相関のかかわりが盛んに議論されているが,一方では,酸化物における格子の不安定性やフォノンとの関連についても報告が多い.超伝導キャリアについては,d波電子対を支持する議論が再び出てきた.いよいよ高温超伝導の機構解明と,包括的な現象論的把握も近づいたのであろうか.
ISSN:0369-8009
2188-2290
DOI:10.11470/oubutsu1932.61.444