脳卒中片麻痺患者に対する呼吸筋訓練が立位姿勢,立位バランスに与える即時効果について

【目的】 片麻痺患者は体幹筋群の低緊張が四肢の活動性を減少させ,姿勢コントロール障害を引き起こしている.体幹機能の回復には脊柱の動的安定化機構が必要であり,体幹の深層筋群である腹横筋,多裂筋,骨盤底筋群,横隔膜がその働きを担うとされている.このうち,腹筋群,横隔膜は呼気筋,吸気筋としても作用し,呼吸筋訓練時にこれらの筋群の活動がみとめられるが,実際に呼吸筋訓練前後にて立位バランス能力を比較した報告は少ない. 本研究では片麻痺患者に対し,呼吸筋訓練を実施することで,体幹深層筋群を活動させ,立位姿勢,バランス能力に与える即時効果を検証することである. 【対象・方法】 対象は当院にてリハビリテーショ...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 116
Main Author 菊池, 謙一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_116

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Summary:【目的】 片麻痺患者は体幹筋群の低緊張が四肢の活動性を減少させ,姿勢コントロール障害を引き起こしている.体幹機能の回復には脊柱の動的安定化機構が必要であり,体幹の深層筋群である腹横筋,多裂筋,骨盤底筋群,横隔膜がその働きを担うとされている.このうち,腹筋群,横隔膜は呼気筋,吸気筋としても作用し,呼吸筋訓練時にこれらの筋群の活動がみとめられるが,実際に呼吸筋訓練前後にて立位バランス能力を比較した報告は少ない. 本研究では片麻痺患者に対し,呼吸筋訓練を実施することで,体幹深層筋群を活動させ,立位姿勢,バランス能力に与える即時効果を検証することである. 【対象・方法】 対象は当院にてリハビリテーション実施中の片麻痺患者17名(男性10名,女性7名,平均年齢:67.4±7.8歳)である.対象者には本研究の趣旨などを紙面にて説明し,同意を得た. 方法は立位姿勢の評価として第5腰椎,第7胸椎,外果,大転子,肩峰にマーカーを貼り,デジタルカメラにて,前額面,矢状面を撮影した後,パソコン上に取り込んだ画像を画像解析ソフトImage jにて分析した.前額面での分析は内果間中央より垂線を引き,第5腰椎と内果間中央,第7胸椎と内果間中央を結ぶ線と垂線のなす角度を,矢状面では外果より垂線を引き,大転子と外果、肩峰と外果を結んだ線と垂線のなす角度を計測した. 立位バランス能力の評価は麻痺側,非麻痺側における片脚立位時間,FRTを実施した. 呼吸筋訓練の方法として端坐位にてThreshold Pep(Respironics社製)を使用し,Borg Scaleにて,2の自覚的強度に負荷圧を設定し,5分間呼気筋訓練を実施した. 訓練前後の比較検討を行うため,有意水準1%にてWilcoxon符号順位和検定を実施した. 【結果】 呼吸筋訓練前後における立位姿勢を評価すると,前額面において第五腰椎,第七頚椎で有意な改善がみとめられた. 立位バランス能力の評価では,麻痺側の片脚立位時間、非麻痺側・麻痺側のFRTにおいて有意に改善がみられた. 【考察】 今回片麻痺患者に対し呼吸筋訓練を実施することで,立位姿勢、立位バランスに即時効果がみとめられた.理由として呼吸筋訓練を実施することで,先行研究で報告されているように横隔膜や腹横筋などの体幹の深層筋群が活動し,腹腔内圧が上昇したと思われる.その結果,横隔膜を介して腰部骨盤帯の長軸方向への支持性が高まり,腹直筋や腹斜筋,脊柱起立筋などの体幹表層筋群が活動しやすい環境におかれ,立位姿勢、バランスの改善につながったと考えられる。
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ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_116