教員加配の有効性について
本研究では,公共政策の有効性の定量的な検証例として,公立小中学校への教員加配と学力および問題行動との関係を統計的に分析する。具体的には,各都道府県の小中学校を対象として毎年実施されている教員加配と,学力の成果指標としての全国学力・学習状況調査の結果および児童生徒の問題行動指標としての暴力行為,いじめの認知,長期欠席の件数との関係を定量的に分析することによって,教員加配の有効性を検証することを試みる。 2012年から2016年までの都道府県パネルデータを用いて,都道府県固定効果,年度固定効果,およびその他の共変量を考慮した回帰モデルを推定することで,項目ごとの教員加配数の増加は学力の向上や問題行...
Saved in:
Published in | 会計検査研究 Vol. 59; pp. 105 - 125 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
会計検査院
08.03.2019
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-521X 2436-620X |
DOI | 10.51016/kaikeikensa.59.0_105 |
Cover
Summary: | 本研究では,公共政策の有効性の定量的な検証例として,公立小中学校への教員加配と学力および問題行動との関係を統計的に分析する。具体的には,各都道府県の小中学校を対象として毎年実施されている教員加配と,学力の成果指標としての全国学力・学習状況調査の結果および児童生徒の問題行動指標としての暴力行為,いじめの認知,長期欠席の件数との関係を定量的に分析することによって,教員加配の有効性を検証することを試みる。 2012年から2016年までの都道府県パネルデータを用いて,都道府県固定効果,年度固定効果,およびその他の共変量を考慮した回帰モデルを推定することで,項目ごとの教員加配数の増加は学力の向上や問題行動の抑制に対して有効であるかを統計的に判定する。 本研究における有効性検証で得られた結果の概要は以下の通りである。まず,小学6年生の学力を成果指標とした場合,学力向上を主な目的とする加配項目は応用的な学習成果に対して正の統計的に有意な関係を持ち,一定の有効性がある可能性が示唆された。また,中学3年生の学力を成果指標とした時の教員加配についても,数学の学力向上に対して一定の有効性が認められた。さらに,問題行動のうち暴力行為の抑制に対して教員加配は負の統計的に有意な関係があること,また児童生徒支援加配はいじめの認知件数と正の統計的に有意な関係があることが示唆された。 最後に,公共政策の有効性検証を行う上で必要な条件を考察し,公共政策の有効性の統計的検証は,瑕疵の検出に用いることもできるが,ベストプラクティスの発見にも用いることができる点を指摘する。 |
---|---|
ISSN: | 0915-521X 2436-620X |
DOI: | 10.51016/kaikeikensa.59.0_105 |