デイケア利用者のTimed up and go Testの経時的変化に影響する要因

【目的】 動的バランス能力は日常生活の諸動作遂行に重要な要素の1つであり、転倒予防・寝たきり予防の観点からも重要である。我々はデイケア利用者にバランス練習を含めた理学療法を行っているが、バランス能力が改善するだけではなく、不変あるいは低下する例も経験する。今回、Timed up and go(以下TUG)の経時的変化を調査し、変化に影響する要因について基本的属性をふまえて検討した。 【方法】 対象は当デイケアを2年間以上利用し、以下の測定が追跡可能な54名(77.4±10.9歳:男性20名、女性34名)とした。測定項目は直近および25か月前(以下初期)の年齢、体重、要介護度、Barthel I...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 274
Main Authors 大隈, 統, 長谷部, 唯, 町田, 明子, 谷本, 幸恵, 小宮山, 隼也, 島嵜, 理紗, 古山, つや子, 小島, 慎一郎, 中村, 諒太郎, 杉本, 諭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_274

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Summary:【目的】 動的バランス能力は日常生活の諸動作遂行に重要な要素の1つであり、転倒予防・寝たきり予防の観点からも重要である。我々はデイケア利用者にバランス練習を含めた理学療法を行っているが、バランス能力が改善するだけではなく、不変あるいは低下する例も経験する。今回、Timed up and go(以下TUG)の経時的変化を調査し、変化に影響する要因について基本的属性をふまえて検討した。 【方法】 対象は当デイケアを2年間以上利用し、以下の測定が追跡可能な54名(77.4±10.9歳:男性20名、女性34名)とした。測定項目は直近および25か月前(以下初期)の年齢、体重、要介護度、Barthel Index、5m最速歩行時間、Berg Balance Scale、TUG、両膝伸展筋力、Mini Mental State Examination(以下MMSE)、握力とした。手続きは、まず直近TUGから初期TUGを引いて平均値と標準偏差(以下SD)を求め、平均値-1/2SDの者を改善群、平均値±1/2SD以内の者を不変群、平均値+1/2SDの者を増悪群に群分けした。この3群の初期の各測定項目を、一元配置分散分析とTukeyの多重比較検定により群間比較した。更に増悪群では、TUGに増悪が見られた時期の診療録を確認し原因を検討した。統計学的解析はSPSSver11.5Jを用い危険率は5%とした。なお対象者には測定値の研究利用について説明し、書面にて同意を得た。 【結果】 TUGの差は3.0±7.6秒で、改善群14名、不変群28名、増悪群12名であった。各群の初期TUGは、改善群18.1秒、不変群16.1秒、増悪群21.1秒で3群間に差を認めなかった。他の項目の群間比較では、年齢は改善群74.5歳、不変群75.9歳、増悪群84.3歳と増悪群が有意に高齢であった。5m最速歩行時間は同様に7.6秒、6.8秒、11.0秒と増悪群で有意に長かった。増悪群の悪化原因の検討では、転倒骨折2名、腰痛増強2名、歩行への恐怖心増大1名、MMSEの5点以上低下2名、2.5kg以上の体重減少2名、本人の意向による歩行様式変更2名などがあげられた。 【考察】 群間比較では初期TUGに有意差を認めなかったことから、動的バランス能力の良好・不良に関わらず経時的に変化する可能性があり、適切なリハが動的バランスの改善や増悪予防に有効であると考えられた。また高齢および歩行速度の低値がTUG増悪の予測要因となる事が示唆され、理学療法施行上考慮すべき要因であると推察された。増悪の要因調査より、治療中に認識しやすい転倒骨折や疼痛増強だけでなく、認知機能や低栄養の観察も重要であると考えられた。 【まとめ】 当デイケア長期利用者の身体機能をTUGに着目して検討した。TUGを増悪させる要因として高齢、歩行速度の低下、転倒骨折、疼痛増悪、認知機能低下、低栄養が推測された。
Bibliography:274
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_274