片側内頚動脈閉塞を呈した下垂体卒中の1例

下垂体卒中は突然の頭痛・視機能障害および下垂体機能低下などを伴う症候群であるが,稀に内頚動脈をはじめとする脳主幹動脈の狭窄あるいは閉塞を来す病態が存在する.今回下垂体卒中により片側の内頚動脈閉塞を呈した稀な症例を経験したので報告する.症例は48歳男性.突然の頭痛・嘔吐および複視を生じ搬送された.初診時には右動眼神経麻痺と右視力消失を認め,画像検査にて下垂体腫瘍と右内頚動脈の閉塞を認めた.下垂体卒中を疑い,緊急に内視鏡下経蝶形骨洞手術を施行した.病理診断は腺腫であった.術後MRAでは右内頚動脈の再開通が示され,視力をはじめ右眼の視機能は回復した.本症例は下垂体卒中により腫瘍内圧が高まり,周辺構造...

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Published in脳卒中 Vol. 47; no. 4; pp. 235 - 240
Main Authors 中村 茂和, 川口 知己, 石川 晃司郎, 水野 翔平, 家永 惇平, 大人 正人, 若林 健一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 2025
The Japan Stroke Society
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Summary:下垂体卒中は突然の頭痛・視機能障害および下垂体機能低下などを伴う症候群であるが,稀に内頚動脈をはじめとする脳主幹動脈の狭窄あるいは閉塞を来す病態が存在する.今回下垂体卒中により片側の内頚動脈閉塞を呈した稀な症例を経験したので報告する.症例は48歳男性.突然の頭痛・嘔吐および複視を生じ搬送された.初診時には右動眼神経麻痺と右視力消失を認め,画像検査にて下垂体腫瘍と右内頚動脈の閉塞を認めた.下垂体卒中を疑い,緊急に内視鏡下経蝶形骨洞手術を施行した.病理診断は腺腫であった.術後MRAでは右内頚動脈の再開通が示され,視力をはじめ右眼の視機能は回復した.本症例は下垂体卒中により腫瘍内圧が高まり,周辺構造物との関連で右内頚動脈が圧迫されて閉塞に至ったものと考えられた.下垂体卒中の中には稀ではあるが,内頚動脈の閉塞を来す病態があることを認識し,脳卒中の鑑別診断の1つとして考慮する必要がある.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.11305