外科手術・がん治療を受ける高齢者に対する老年医学的評価と予後予測
がん治療または外科手術を受ける高齢者は,その病状や臓器障害に加え,身体的または精神・心理的な機能障害の程度や社会背景が生命予後のみならず健康寿命に影響することが,これまでの研究により明らかにされている.そのため,従来の治療前または術前評価に加えて,高齢者総合機能評価(CGA)/高齢者機能評価(GA)や身体機能評価,すなわち老年医学的評価を行うことにより,高齢者特有の問題点を明らかにし,術後合併症や生存率,QOLなどへの影響を予測することが求められる.特にフレイルと判断された場合は,CGA/GA,身体機能評価の結果に基づいた老年医学的介入を行うことが治療または術後予後やQOLを改善させる可能性が...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 61; no. 3; pp. 247 - 255 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.07.2024
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.61.247 |
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Summary: | がん治療または外科手術を受ける高齢者は,その病状や臓器障害に加え,身体的または精神・心理的な機能障害の程度や社会背景が生命予後のみならず健康寿命に影響することが,これまでの研究により明らかにされている.そのため,従来の治療前または術前評価に加えて,高齢者総合機能評価(CGA)/高齢者機能評価(GA)や身体機能評価,すなわち老年医学的評価を行うことにより,高齢者特有の問題点を明らかにし,術後合併症や生存率,QOLなどへの影響を予測することが求められる.特にフレイルと判断された場合は,CGA/GA,身体機能評価の結果に基づいた老年医学的介入を行うことが治療または術後予後やQOLを改善させる可能性があるが,そのエビデンスは乏しいため,今後の研究成果が必要である.フレイルの概念が老年医学領域と老年腫瘍学領域で異なることにも留意しておくことが必要であるが,がん治療または手術を受ける高齢者を年齢や見た目だけで判断せず,治療や手術によるデメリットがメリットを上回る集団を抽出するという点では共通している.がん治療または手術前に老年医学的評価を行い,それに基づく介入をルーチン化するためには老年科医を中心とする多職種連携が必須となるため,その構築が喫緊の課題である. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.61.247 |