日本国内の看護系学術誌にみる母乳育児についての言説
目的:日本国内全国紙版の看護系学術誌に発表された論文から「母乳育児」を構築している言説を探求する。方法:92文献について言説分析を行った。結果:主要な言説として規範性と不確実性が示された。規範性には,母乳育児が社会にとっても母子にとっても優れた栄養法であるとする【良いもの】,母乳育児と「良い母親」を結合する【母親の規範】,母乳育児推進を医療者の義務とする【専門家の規範】が含まれた。一方,不確実性には,母乳育児が母親を破綻させかねない【リスク】,母乳育児の成否や支援方法を裏付ける根拠の【曖昧さ】が含まれた。なかでも,【母親の規範】【専門家の規範】【リスク】は5割以上の頻度で出現した。結論:医療者...
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Published in | 日本看護研究学会雑誌 Vol. 44; no. 5; pp. 5_749 - 5_761 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本看護研究学会
20.01.2022
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Subjects | |
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Summary: | 目的:日本国内全国紙版の看護系学術誌に発表された論文から「母乳育児」を構築している言説を探求する。方法:92文献について言説分析を行った。結果:主要な言説として規範性と不確実性が示された。規範性には,母乳育児が社会にとっても母子にとっても優れた栄養法であるとする【良いもの】,母乳育児と「良い母親」を結合する【母親の規範】,母乳育児推進を医療者の義務とする【専門家の規範】が含まれた。一方,不確実性には,母乳育児が母親を破綻させかねない【リスク】,母乳育児の成否や支援方法を裏付ける根拠の【曖昧さ】が含まれた。なかでも,【母親の規範】【専門家の規範】【リスク】は5割以上の頻度で出現した。結論:医療者は母乳育児に付随する母親への偏った見方がないか内省するとともに,母乳育児の不確実性と対峙し,「母乳か人工乳か」の単純な二項対立を乗り越えて授乳支援の知を開発していく必要があると考えられた。 |
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ISSN: | 2188-3599 2189-6100 |
DOI: | 10.15065/jjsnr.20210218132 |