地域包括ケア病棟入院を契機とした高齢者の住まいの変化
目的:高齢者が入院治療を経て生活復帰する際にはこれまで住み慣れた住まいの変更が提案されることがある.本研究は地域包括ケア病棟を経由した高齢者の住まいの変化を明らかにすることを目的とする.対象と方法:人口3万人,高齢化率37%の市に存在するA病院の地域包括ケア病棟(53床)に2018年4月1日~2020年3月31日の2年間入退院した65歳以上の患者を対象とした.電子カルテシステムに記録された情報を後ろ向き調査し,日常生活動作,退院時の医療行為,入院前後の住まい,入院後7日以内に聴取した退院先の意向を収集した.結果:地域包括ケア病棟に入院した65歳以上の患者735名のうち予定手術等での入院127名...
Saved in:
Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 61; no. 3; pp. 304 - 311 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.07.2024
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 目的:高齢者が入院治療を経て生活復帰する際にはこれまで住み慣れた住まいの変更が提案されることがある.本研究は地域包括ケア病棟を経由した高齢者の住まいの変化を明らかにすることを目的とする.対象と方法:人口3万人,高齢化率37%の市に存在するA病院の地域包括ケア病棟(53床)に2018年4月1日~2020年3月31日の2年間入退院した65歳以上の患者を対象とした.電子カルテシステムに記録された情報を後ろ向き調査し,日常生活動作,退院時の医療行為,入院前後の住まい,入院後7日以内に聴取した退院先の意向を収集した.結果:地域包括ケア病棟に入院した65歳以上の患者735名のうち予定手術等での入院127名を除外した608名を対象とした.平均年齢は82.9歳,85歳以上は52%,90歳以上は26%であった.自宅からの入院者465名のうち,64%が自宅退院,23%は施設・病院へ住まいを変え,残る13%が死亡していた.施設・病院からの入院者143名は8割以上が施設へ戻っていたが,入院前とは別の施設・病院へ退院していたものが36名(25%)あり,介護医療院併設の病院へ退院が最多であった.自宅からの入院者で生存退院した404名においては,食事動作自立,移動自立,また同居家族有りが自宅退院実現に対する独立した関連要因であった.入院後7日以内の退院先意向では,自宅からの入院者で本人が自宅退院を希望している246名のうち,56名の家族は施設・病院を希望しており,家族との意向不一致が23%に見られた.結論:地域包括ケア病棟を経由して高齢者の多くが住まいを変える実態が明らかになった.退院先に関する家族内の意向の不一致や医療及び介護上の制約を調整しながら,その人らしい暮らしが全うできるよう,多職種で対話を続けたい. |
---|---|
ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.61.304 |