外科病棟における手術部位感染症(SSI)サーベイランスの成果

〈緒言〉  病院感染対策の一環として、病院感染症サーベイランスの重要性が着目されている。病院感染は、医療コストを増大させ、また入院期間を延長し患者の精神的・肉体的負担も増大することで、患者・家族の医療に対する満足度を著しく損なうことになる。 SSIは外科手術後の最も多い合併症であり、特に消化器外科における発生率は高いといわれている。当院外科病棟においても、SSIの発生が非常に多いと感じたことから、現状を把握しEBMに基づく対策を実践することでSSIを減少させることを目的にSSIサーベイランスを開始した。SSI予防対策を検討・実践し、また改善策を実践したことにより発生率が減少したのでここに報告す...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 229
Main Authors 池田, 和江, 齋藤, 浩子, 齋藤, 由利子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2006
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.229.0

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Summary:〈緒言〉  病院感染対策の一環として、病院感染症サーベイランスの重要性が着目されている。病院感染は、医療コストを増大させ、また入院期間を延長し患者の精神的・肉体的負担も増大することで、患者・家族の医療に対する満足度を著しく損なうことになる。 SSIは外科手術後の最も多い合併症であり、特に消化器外科における発生率は高いといわれている。当院外科病棟においても、SSIの発生が非常に多いと感じたことから、現状を把握しEBMに基づく対策を実践することでSSIを減少させることを目的にSSIサーベイランスを開始した。SSI予防対策を検討・実践し、また改善策を実践したことにより発生率が減少したのでここに報告する。 〈方法〉 1.SSIサーベイランス期間 H.15.3からH.15.8 :後ろ向き調査 H.15.8:SSI予防対策の検討 H.15.9からH.17.10:対策実施後の調査 2.SSIサーベイランス対象 外科病棟手術患者(全身麻酔・脊髄麻酔患者:肛門手術を除く) 3.SSIサーベイランス項目 氏名、年齢、手術日、術後診断、術式、術者、創分類、ASAスコア、手術時間、剃毛の有無、縫合糸、ドレーンの有無、抗生物質、SSIの有無、他の感染症の有無 4.SSIの判定 CDCによるSSI診断基準に基づき、医師が診断した。 5.SSI発生率の算出 手術別感染率、NNIS(米院内感染サーベイランス)リスク別感染率を対策別に算出した。 6.SSI発生患者と発生しない患者の術後 平均在院日数を算出した。 〈結果〉  対策前のSSI発生率は、外科手術全体で15.7%、対策後の平成17年10月までの発生率は5.4%に減少した。手術別SSI発生率は、大腸手術が38%から15.7%に、虫垂手術が23.5%から13.2%に、胆嚢手術が13.3%から2.0%に減少した。このうち、大腸手術はX2検定でP=0.0072と有意差を認めた。このことからSSI防止対策は大腸手術においてもっとも有効であったといえる。発生率を比較するに当たり、リスクが高いほど発生率は高くなるが、NNISのリスク2以上を比較すると、対策前は6.1%、対策後は5.2%とリスクの大差は認められなかった。 段階的対策におけるSSI発生率は、 (1)CDCガイドラインによる対策のうち当院で可能な対策を実施(H15.9から):SSI発生率6.6% (2)上記(1)に加え、術後48時間以降の手術創の解放と手術創の消毒廃止(H.16.4から):SSI発生率9.0% (3)上記(1)と(2)に加え、皮膚の縫合糸をモノフィラメントに統一(H.16.12からH.17.10):SSI発生率5.4%に減少した。手術創の解放と消毒廃止で一次発生率は上昇したが、対策を継続しつつ絹糸を廃止しモノフィラメントに変更、結果的に発生率は低下した。  SSI患者の術後平均在院日数は、虫垂手術は11.7日、胆嚢手術は16.5日、結腸手術は18.5日延長し、SSIを起こさなかった場合より約2倍入院期間が延長された。
Bibliography:2D11
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.229.0