大動脈弁および僧帽弁に弁膜瘤を伴った感染性心内膜炎の1例

【はじめに】 感染性心内膜炎は弁膜や心内膜、大血管内膜に細菌集蔟を含む疣贅(vegetation)を形成し、菌血症、血管塞栓、心障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である。疣贅は特に弁接合部に多く、複数弁に認められることもあるため、心臓超音波にてすべての弁をくまなく観察する必要がある。また感染性心内膜炎による弁組織の破壊により弁膜瘤を生じることもある。瘤の穿孔により弁逆流を生じる場合もあり、感染性心内膜炎時には弁膜瘤の有無も観察しなければならない。 今回我々は、僧帽弁および大動脈弁に同時に弁膜瘤を発症した稀な症例を経験したので報告する。 【病歴】 10年来高血圧症、糖尿病、高尿酸血...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 253
Main Authors 三村, 隆典, 大橋, 成孝, 菅沼, 徹, 荒幡, 篤, 青木, 知子, 黒石, 正子, 高木, 俊介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.57.0.253.0

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Summary:【はじめに】 感染性心内膜炎は弁膜や心内膜、大血管内膜に細菌集蔟を含む疣贅(vegetation)を形成し、菌血症、血管塞栓、心障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患である。疣贅は特に弁接合部に多く、複数弁に認められることもあるため、心臓超音波にてすべての弁をくまなく観察する必要がある。また感染性心内膜炎による弁組織の破壊により弁膜瘤を生じることもある。瘤の穿孔により弁逆流を生じる場合もあり、感染性心内膜炎時には弁膜瘤の有無も観察しなければならない。 今回我々は、僧帽弁および大動脈弁に同時に弁膜瘤を発症した稀な症例を経験したので報告する。 【病歴】 10年来高血圧症、糖尿病、高尿酸血症で治療を続けていた。血圧は170~190mmHg/96~100 mmHg、心肥大あり、糖尿病はコントロール不良であった。 【症例】 72歳、男性。平成19年4月下旬より体温37度台の微熱、全身倦怠感、体重減少(2ヶ月で約6_kg_)を自覚するようになり、近隣開業医を受診。抗生剤、解熱剤の経口投与を受けていたが、状態が改善せず7月初旬に精査目的にて当院紹介となった。 【検査所見】 血圧:159/85mmHg 血液検査:WBC 9020/μl、CRP 7.85_mg_/dl 腫瘍マーカー(CEA、CA19-9):正常範囲内 聴診:4LSBで拡張期雑音を聴取(Levine _I_~_II_/_V_) 血液培養:Streptococcus gordonii を検出(3回の血液培養検査にていずれも上記同一菌種を検出) CTおよび腹部超音波:他の感染巣 経胸壁心臓超音波検査:左房拡大、左室拡大、軽度LVH、大動脈弁左冠尖に疣贅を認めた。僧帽弁前尖から左房へと突出する異常エコーを認めた。カラードプラにて高度大動脈弁逆流、軽度僧帽弁逆流を認めた。経食道心臓超音波検査:大動脈左冠尖に疣贅を認め、弁膜瘤の形成を認めた。僧帽弁前尖に弁膜瘤を認めた。 【まとめ】 心臓超音波による感染性心内膜炎の精査には、疣贅の検索、弁機能障害の評価、感染部位の広がりの評価が重要である。今回、僧帽弁の弁膜瘤は経胸壁心臓超音波にて検出が可能であったが、経食道心臓超音波により大動脈弁の弁膜瘤を検出することが出来た。我々は感染性心内膜炎に起因する大動脈弁閉鎖不全に併発した大動脈弁弁膜瘤および僧帽弁弁膜瘤の診断に心臓超音波検査が有用であった1例を経験したので報告した。
Bibliography:2F206
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.57.0.253.0