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経胸壁心エコー法にて右心内浮遊血栓を認めた肺血栓塞栓症の一例
【はじめに】呼吸苦、胸痛を主訴とする心不全疑い患者において、簡便かつ迅速に心病変をスクリーニングできる経胸壁心エコー法は欠くことのできない検査法の1つである。時には予測しえない重大な異常所見をみることも少なくない。今回我々は、心不全精査目的にて行った経胸壁心エコー法において、三尖弁に付着する右心内浮遊血栓を認め、診断及び治療に有用であった肺血栓塞栓症例を経験したので報告する。【症例】75歳、女性。既往歴:糖尿病、高血圧、高脂血症。現病歴:平成18年11月17日、左片麻痺が出現し、脳幹部梗塞と診断され入院となる。入院後は抗血栓剤、脳保護剤の点滴およびリハビリテーションを行い離床も順調に進んでいた...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 255 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.57.0.255.0 |
Cover
Summary: | 【はじめに】呼吸苦、胸痛を主訴とする心不全疑い患者において、簡便かつ迅速に心病変をスクリーニングできる経胸壁心エコー法は欠くことのできない検査法の1つである。時には予測しえない重大な異常所見をみることも少なくない。今回我々は、心不全精査目的にて行った経胸壁心エコー法において、三尖弁に付着する右心内浮遊血栓を認め、診断及び治療に有用であった肺血栓塞栓症例を経験したので報告する。【症例】75歳、女性。既往歴:糖尿病、高血圧、高脂血症。現病歴:平成18年11月17日、左片麻痺が出現し、脳幹部梗塞と診断され入院となる。入院後は抗血栓剤、脳保護剤の点滴およびリハビリテーションを行い離床も順調に進んでいたが、12月後半から息切れ、下腿浮腫が出現。平成19年1月9日、呼吸困難が急激に悪化したため、心エコー検査及び胸部・下肢造影CTを施行した。心エコー:三尖弁に付着し右房右室間を浮遊する血栓エコー(60mm×8mm)を認めた。右心系の著明な拡大、左室の圧排像を認め、三尖弁逆流より求めた推定右室収縮期圧は80mmHgであった。下大静脈径は26mmと拡張し呼吸性変動は消失していた。Mモード計測による左室駆出率は60%と左室機能は良好であった。造影CT:両側主肺動脈と両下肢深部静脈内に血栓を疑わせる陰影欠損を認めた。以上から肺血栓塞栓症と診断した。治療経過:右房から右室にかけて浮遊血栓を認め、肺動脈の閉塞が広範囲で呼吸不全、心不全の悪化が急速に進行したため、外科的にも対応できるように心臓血管外科を併設する他施設へ転院した。その後、t-PAの静脈内投与及びヘパリンの持続点滴投与にて右心内の浮遊血栓と肺動脈内の血栓は消失した。両下肢深部静脈には血栓が残存したため、下大静脈フィルターを留置され、1月23日に当院へ再転院となった。その後、ワーファリンコントロールを行い、CT上肺動脈内の陰影欠損消失を再確認した。心エコー検査にて肺高血圧所見の消失を確認し、3月10日に退院となった。【考察】肺血栓塞栓症における心エコー検査で、本症例のように右心内に巨大血栓を認めることは稀である。通常、経胸壁心エコー検査における肺血栓塞栓症の診断は、右心系の内圧を三尖弁逆流や肺動脈弁逆流から推定することにより行われる。しかし、肺高血圧を示す疾患は多く、特に肺血管抵抗が上昇する原発性肺高血圧症との鑑別が必要となるが、右室拡張期圧及び平均圧、脈圧から除外診断できると報告されている。本症例においては、三尖弁に付着し今にも遊離しそうな巨大血栓を認めたことで即診断となり、造影CTにて肺動脈と下肢深部静脈内の血栓を検出したことで確定診断となった症例であった。【まとめ】心エコー法は、リアルタイム性に富み動的評価に優れていることから、可動性のある浮遊血栓の観察に適している。また、非侵襲的に繰り返し検査が行えることから、今回の肺血栓塞栓症例における心エコー法は非常に有用であった。 |
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Bibliography: | 2F208 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.57.0.255.0 |