乳腺穿刺吸引細胞診の新報告様式を導入してみて(続報)

<緒言>近年,乳癌はわが国における女性の癌罹患率1位となり,今後さらに増加すると考えられる.検診等のスクリーニングによる早期発見に加え,早い段階での確定診断が望まれる.  細胞診は,乳腺疾患においては,乳頭分泌物や腫瘤の穿刺吸引により,採取された細胞を顕微鏡下で直接判定する為,確定診断となり得る.また,生検に比べ被験者に対する侵襲も少ない.しかし従来の細胞診報告様式は,「検体の適正・不適正を判断する項目がない」, 「判定基準が明確にされていない」等の問題を抱えていた.そこで,日本乳癌学会では「乳癌取り扱い規約第15版」から新たな細胞診の報告様式を記載することになった.  第53回の本学術総会で...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 151
Main Authors 小俣, 芳彦, 中安, 邦夫, 熊木, 伸枝, 鍛代, 久美子, 飯尾, 宏, 相原, 乃理子, 佐藤, 嘉洋, 篠田, 政幸, 別所, 隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2006
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.151.0

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Summary:<緒言>近年,乳癌はわが国における女性の癌罹患率1位となり,今後さらに増加すると考えられる.検診等のスクリーニングによる早期発見に加え,早い段階での確定診断が望まれる.  細胞診は,乳腺疾患においては,乳頭分泌物や腫瘤の穿刺吸引により,採取された細胞を顕微鏡下で直接判定する為,確定診断となり得る.また,生検に比べ被験者に対する侵襲も少ない.しかし従来の細胞診報告様式は,「検体の適正・不適正を判断する項目がない」, 「判定基準が明確にされていない」等の問題を抱えていた.そこで,日本乳癌学会では「乳癌取り扱い規約第15版」から新たな細胞診の報告様式を記載することになった.  第53回の本学術総会で,平成15年より導入した乳腺穿刺吸引細胞診新報告様式の約1年間の統計結果について考察と併せて報告をした.今回われわれは,その後の統計結果を加え導入時との比較検討や伝票の記載,履歴の有無,病変の性状による変化等も併せて報告する. <方法>前回と同様で,当院の外科医と病理医,細胞検査士で細胞診の新報告様式についてガイドラインに則って説明,協議し導入した.判定は,「検体不適正(inadequate) 」と「適正(adequate) 」に大別し,さらに適正であれば,「正常あるいは良性(normal or benign)」,「鑑別困難(indeterminate)」,「悪性の疑い(suspicious for malignancy)」,「悪性(malignant)」の4種類に分類して報告した. <結果>導入当初(症例数162件)の成績は,「検体不適正例」45件(27.8%),「検体適正例」117件(72.2%)であった.詳細は,「正常あるいは良性」が89件(55.0%),「鑑別困難」が8件(4.9%),「悪性の疑い」1件(0.6%),「悪性」19件(11.7%)であった.  その後,症例数266件の時点で,「検体不適正例」51件(19.1%),「検体適正例」215件(80.8%)であった.詳細は,「正常あるいは良性」が165件(62%),「鑑別困難」が21件(7.9%),「悪性の疑い」2件(0.7%),「悪性」27件(10.1%)となった.  さらに最近の症例272件では,「検体不適正例」47件(17.2%),「検体適正例」225件(82.7%)であった.詳細は,「正常あるいは良性」が137件(50.3%),「鑑別困難」が28件(10.2%),「悪性の疑い」10件(3.6%),「悪性」50件(18.3%)であった.  以上のように「検体不適正例」については基準には満たないものの,減少傾向にあるが,「鑑別困難」については,基準内であったものが,徐々に増加し最近の統計では僅かではあるが,基準を超えてしまった.また,「悪性の疑い」は増加傾向に,「正常あるいは良性」,「悪性」については,ほぼ横ばいの状態であった.  「検体不適正例」を検証したところ,間質結合織が多くの部位を占める病変は,上皮細胞成分が採取されにくく,再検を繰り返すため,この区分の占める割合を上昇させてしまう.「鑑別困難」については,異型細胞は認められるが少数のもの,硬化性腺腫等の良悪の判定が困難なもの等があげられる.  今後さらに詳細な分析を行い,臨床側との連携を強化することでより正確で迅速な情報提供をしていきたい.
Bibliography:1G403
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.151.0