当院における即時型輸血副作用の発生状況

〈緒言〉 近年、血液事業上の安全対策の推進により輸血用血液の安全性は徐々に高まってきたが、輸血副作用を根絶することは今もなお困難である。当院では、安全かつ効果的な輸血療法の実施を目的として、輸血療法委員会が「輸血実施記録」を作成し輸血実施に関する情報を記録するシステムを2004年6月より導入した。それにより、臨床側と検査部側の両方で輸血実施に関する詳細な情報を共有することが可能となった。今回我々は、診療科より回収された「輸血実施記録」により即時型輸血副作用の発生状況を調査した。また、導入による利点や課題なども合わせて検討を行なった。 〈輸血実施記録の概要と運用〉 「輸血実施記録」は1血液製剤に...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 289
Main Authors 五十嵐, 健一, 平沢, 博, 澤田, 恵美子, 河内, 貞臣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2005
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.54.0.289.0

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Summary:〈緒言〉 近年、血液事業上の安全対策の推進により輸血用血液の安全性は徐々に高まってきたが、輸血副作用を根絶することは今もなお困難である。当院では、安全かつ効果的な輸血療法の実施を目的として、輸血療法委員会が「輸血実施記録」を作成し輸血実施に関する情報を記録するシステムを2004年6月より導入した。それにより、臨床側と検査部側の両方で輸血実施に関する詳細な情報を共有することが可能となった。今回我々は、診療科より回収された「輸血実施記録」により即時型輸血副作用の発生状況を調査した。また、導入による利点や課題なども合わせて検討を行なった。 〈輸血実施記録の概要と運用〉 「輸血実施記録」は1血液製剤につき1枚、製剤と共に診療科へ払い出しを行なう。まず輸血実施者2名がチェックリストを元に患者と製剤の血液型、交差試験結果など必要な確認を行なう。そして、輸血前後に体温及び血圧の測定を行なうとともに、副作用発生の有無を計4回に渡りチェックする。記録終了後は診療科と検査部で一部ずつデータを保管する。 〈方法〉 2004年6月-2005年3月までに当院にて輸血を行なった患者303名、総輸血数1887バッグ、総単位数7203単位(Ir-RC-MAP 1264バッグ、2261単位、FFP 245バッグ、487単位、Ir-PC 378バッグ、4455単位)について製剤別、副作用別に発生状況を調査した。尚、自己血に関しての調査は今回行なわなかった。 〈結果〉 総輸血数に対する副作用の発生率は3.4%(65例)、内訳は発熱が1.3%(25例)、蕁麻疹が1.2%(22例)、血管痛が0.5%(9例)、不快感が0.3%(5例)、その他が0.1%(4例)であった。また、製剤別にみた発生率はIr-RC-MAPが3.2%(40例)FFPは2.0%(6例)、Ir-PCは5.0%(19例)であった。また、今回の調査では特に重篤な副作用の発生はみられなかった。 〈考察〉  輸血副作用はIr-PC、Ir-RC-MAP、FFPの順に高率に発生していた。Ir-PCにおいてはそのほとんどが蕁麻疹(17例)であり、発熱は(1例)に留まった。これは白血球除去フィルター使用による副作用予防の効果が要因の1つとして考えられた。Ir-RC-MAPでは発熱が半分を占め、その全てが輸血後に発生していた。しかし、体温測定は輸血の前後のみであるため詳細な体温の変化を発見できなかった可能性が示唆された。血管痛の多くは輸血開始後5-15分で発生したが、皆、一過性の症状で終了まで持続するものはなかった。 〈結語〉  「輸血実施記録」による輸血情報を元に即時型輸血副作用の発生状況を調査した。これを導入したことにより、製剤ごとの詳細な副作用発生状況を把握することができ、また、それらを集計することで臨床が必要とする輸血副作用に関するデータを検査部から提示することも可能となった。更に、輸血実施者の輸血副作用を早期発見することや、輸血を安全に実施することへの意識が高まったものと思われた。しかし、副作用発生時の原因究明と再発予防策などはまだ構築されておらず、今後の課題である。
Bibliography:2K09
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.54.0.289.0