被殻出血における出血量,上肢麻痺の程度,発症時の年齢が上肢機能および日常生活活動に及ぼす影響

一般に脳血管疾患発症後の予後は,出血量,病変部位,麻痺の程度,年齢などが相互に影響しあっていると考えられている.本稿では,早期に予後予測をし,リハビリテーションを効率よく行うための目安とするために,出血量,上肢麻痺の程度,発症時の年齢が上肢機能および日常生活活動(以下ADL)に及ぼす影響を調べた.<BR>[対象] 1997年4月から2005年3月までの9年間で長野松代総合病院(以下当院)に入院し,リハビリテーションを実施した被殻出血70例のうち,脳血管疾患の既往のない,被殻出血CT分類の_I_型16例(平均年齢67.2±11.3(SD)歳)を対象とした.<BR>[方法] 上肢麻痺は上肢Brun...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 290
Main Authors 秋月, 章, 中村, 裕一, 大日向, 志保, 小出, 和代, 松井, 克明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.56.0.290.0

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Summary:一般に脳血管疾患発症後の予後は,出血量,病変部位,麻痺の程度,年齢などが相互に影響しあっていると考えられている.本稿では,早期に予後予測をし,リハビリテーションを効率よく行うための目安とするために,出血量,上肢麻痺の程度,発症時の年齢が上肢機能および日常生活活動(以下ADL)に及ぼす影響を調べた.<BR>[対象] 1997年4月から2005年3月までの9年間で長野松代総合病院(以下当院)に入院し,リハビリテーションを実施した被殻出血70例のうち,脳血管疾患の既往のない,被殻出血CT分類の_I_型16例(平均年齢67.2±11.3(SD)歳)を対象とした.<BR>[方法] 上肢麻痺は上肢Brunnstrom stage(以下Br.stage)にて発症時,1ヶ月後,2ヶ月後,調査時(50.3±23.1(SD)ヶ月)の4時点で評価を行った.上肢機能は上肢機能実用性評価基準を一部改変して使用し,実用手,補助手,廃用手に分類した.ADLはBartel Index(以下BI)を使用し,発症時,退院時(1.68±0.81ヶ月),調査時(50.3±23.1ヶ月)で評価した.出血量はCTのvolume積算機能を用い,医師により算出された.統計学的検討には,相関係数および直線回帰分析,Wilcoxon符号付順位和検定を用い,有意水準はいずれも5%未満を有意とした.<BR>[検討項目] _丸1_出血量と上肢Br.stageの関係,_丸2_上肢Br.stageの変化,_丸3_上肢機能の変化と上肢Br.stageの変化の関係,_丸4_上肢Br.stageとADLの関係の4項目である.<BR> [結果] _丸1_出血量と上肢Br.stageの関係では,出血量が多いと上肢Br.stageが低く,出血量が少ないと上肢Br.stageが高くなり,相関が認められた(r=0.70,p<0.0025)._丸2_上肢Br.stageの変化では,発症時にBr.stage_I_であった4例のうち2例がBr.stage_II_に回復し,残り2例は変化がみられなかった.発症時Br.stage_II_であった3例のうち2例はBr.stage_III_に回復し,1例は変化が見られなかった.発症時Br.stage_III_であった2例はBr.stage_VI_に回復し,発症時Br.stage_IV_であった1例もBr.stage_VI_に回復していた.Br.stage_V_であった4例のうち3例はBr.stage_VI_に回復し,残り1例は回復がみられなかった._丸3_上肢機能の変化と上肢Br.stageの変化の関係では,発症時に上肢Br.stageが_III_以上であった9例は調査時にはすべて実用手となっており,発症時Br.stage_I_であった4例はすべて廃用手となっていた.また,発症時Br.stage_II_では3例のうち2例は補助手になり,残り1例は廃用手にとどまっていた._丸4_上肢Br.stageとADLの関係では,Br.stage_V_,_VI_である症例は,高齢で意欲低下がみられた1例以外は全てBIが100点となっていた.<BR>[考察] 衛藤ら<SUP>1)</SUP>の報告と同様に,上肢の麻痺は出血量が多いほど強く,発症時に上肢Br.stage_I_,_II_と麻痺が重度である場合は予後不良であること,ADLの自立度は麻痺が強くても年齢が若いと良好で,麻痺が軽度であっても高齢で,意欲低下や認知症などがあると予後不良であることが今回の検討より判明した. 入院期間の短縮化が進む中で,今回の結果を基に,早期に予後予測・ゴール設定を行い,リハビリテーションを効率的に行っていくことが今後も重要であると考えられた.<BR>[文献]1)衛藤誠二ほか:被殻出血における正中神経刺激短潜時体性感覚誘発電位と上肢機能.リハ医学,1996.
Bibliography:2F107
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.56.0.290.0