急性肝炎38例の臨床像の解析

【はじめに】急性肝炎は自然経過ですみやかに軽快するものから集中治療を行っても死に至るものまで臨床像が幅広く、入院後は日々の変化に十分注意して診療にあたる必要がある。 【目的】北海道十勝地方の中核病院である当院に受診あるいは紹介された急性肝炎の臨床像を明らかにする。 【対象と方法】当院で2009年1月から2010年12月の間に入院加療された急性肝炎38例について、急性肝炎の原因と血液検査値の推移、および治療を含む臨床像について検討した。 【結果】患者背景は男女比1:1、年齢34 - 89才(中央値58才)であった。原因を特定できたものは19例(50%)で、ウィルス性14例(HBV10例、HAV、...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 60; p. 137
Main Authors 棚橋, 振一郎, 深谷, 進司, 伊藤, 貴史, 菊池, 英明, 山本, 浩之, 田村, 佳奈恵, 吉田, 晃, 新, 智文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2011
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.60.0.137.0

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Summary:【はじめに】急性肝炎は自然経過ですみやかに軽快するものから集中治療を行っても死に至るものまで臨床像が幅広く、入院後は日々の変化に十分注意して診療にあたる必要がある。 【目的】北海道十勝地方の中核病院である当院に受診あるいは紹介された急性肝炎の臨床像を明らかにする。 【対象と方法】当院で2009年1月から2010年12月の間に入院加療された急性肝炎38例について、急性肝炎の原因と血液検査値の推移、および治療を含む臨床像について検討した。 【結果】患者背景は男女比1:1、年齢34 - 89才(中央値58才)であった。原因を特定できたものは19例(50%)で、ウィルス性14例(HBV10例、HAV、HCV、HEV、CMVがそれぞれ1例)、自己免疫性4例、アルコール性1例、薬剤性1例であった。その他の19例はウィルス感染、薬剤、健康食品が原因として疑われたが特定できなかった。血液検査では、入院初期にピークに達するものが多く、ALT値は全例中23例(61%)が入院第1病日にピークに達していた。B型劇症肝炎の1例と原因不明劇症肝炎の1例は集中治療を行ったがいずれも死亡した。A型肝炎1例はPTが40%まで低下し劇症化の恐れがあったためステロイドパルスを行い救命し得た。自然経過のみで軽快したのは27例であった。急性期以降も加療を要したのは、ステロイドを用いた自己免疫性肝炎3例、半年後に慢性化を確認しIFNβ+リバビリンを導入したC型肝炎1例であった。 【考察】肝炎のピークは入院初期数日間に集中しており、一旦改善すると原因の特定に至らずに退院となることが多いが、ウィルス性感染症疑診例のうちE型肝炎について検索されたのは10例中2例であり、畜産業が盛んな当診療圏では積極的にE型肝炎の検索も考慮すべきと思われた。また抗核抗体陽性やIgG高値などから自己免疫性肝炎を疑う症例や、自然経過で改善が思わしくない症例には積極的に肝生検を考慮すべきと思われた。
Bibliography:1E-12
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.60.0.137.0