厨房内におけるATPふき取り検査成績

<緒言>ATP(アデノシン三リン酸)ふき取り検査は、ATPを汚染指標として迅速、かつ簡便に食品調理機具類の洗浄度検査を行う手法である。今回、当栄養科厨房内の調理機具の洗浄度を把握し、今後の厨房衛生管理に役立てる為に、ATPふき取り検査を実施した。また、付着細菌の種類を特定する為に、細菌の検出検査も実施した。 <材料と方法>厨房衛生管理を行う上で作業上特に重要な、厨房器具8箇所および栄養科職員の手指を「ハイリスクポイント」として選定し、ATPふき取り検査を行った。ATPふき取り検査は、ルミテスターPD-10&ルシパックワイド(キッコーマンKK)を用いた。選定した9箇所を1...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 237
Main Authors 尾崎, 隆男, 舟橋, 恵二, 朱宮, 哲明, 野口, 千夏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2006
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.237.0

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Summary:<緒言>ATP(アデノシン三リン酸)ふき取り検査は、ATPを汚染指標として迅速、かつ簡便に食品調理機具類の洗浄度検査を行う手法である。今回、当栄養科厨房内の調理機具の洗浄度を把握し、今後の厨房衛生管理に役立てる為に、ATPふき取り検査を実施した。また、付着細菌の種類を特定する為に、細菌の検出検査も実施した。 <材料と方法>厨房衛生管理を行う上で作業上特に重要な、厨房器具8箇所および栄養科職員の手指を「ハイリスクポイント」として選定し、ATPふき取り検査を行った。ATPふき取り検査は、ルミテスターPD-10&ルシパックワイド(キッコーマンKK)を用いた。選定した9箇所を1回測定後、その結果を栄養科全職員に報告すると共に、器具洗浄マニュアルを作成した。その後2日間計2回測定し、数値が高い個所は問題点を改善後、さらに2日間計2回測定を行った。測定値は,Aランク(合格):相対発光単位(Relative Light Unit ,RLU )100以下,Bランク(注意):RLU 101から1,000,Cランク(不合格):RLU 1,001以上に分けて評価した。細菌の検出は1回のみの検査とし、5回目のATPふき取り検査時に採取し、当院の細菌検査室にて寒天培地を用いて行った。 <結果と考察>計5回施行したATPふき取り検査成績を表に示す。今回の検査を行うまで調理器具の洗浄は各調理担当者に委ねており、1回目のATPふき取り検査結果でCランクが多かったことは、洗浄の工程や内容に問題があったと思われた。しかし、洗浄マニュアル作成後の3回目の検査結果では、Cランクはザルと包丁の2箇所であった。ザルは構造上洗浄が難しく、包丁は洗浄時に使用するスポンジおよび包丁を保管する器具庫の汚れによよる交差汚染が考えられた。よって、スポンジは毎使用後に洗浄し、包丁保管庫においては業務終了後に洗浄を行う等、問題点の改善を行った。そして改善後の5回目の検査結果では、Cランクの箇所は見られなかった。  細菌検出結果は、RLU 100以下の箇所では見られず、RLU 101以上の箇所では、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、大腸菌、カンジタ菌が検出された。栄養科職員の手指(手洗後)においては、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌が検出された。手洗いは食品衛生管理の基本である為、手洗いの方法や時間の再確認が必要と思われた。  今回のATPふき取り検査の測定値と一般生菌の検出率の調査において、RLU 100以下では、一般生菌は検出されなかった。全ての器具のRLUを100以下に保つことは困難であるが、現在の衛生作業手順を見直し、低い数値を目標に管理を行うことが職員の衛生意識向上に繋がるものと思われた。 <結論>衛生管理においてATPふき取り検査は有効であり、RLU 100以下が食品衛生管理上の目標値と考えられた。今後も定期的にATPふき取り検査を行い、厨房衛生管理に役立てていきたい。
Bibliography:2D19
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.237.0