膝蓋骨骨折術後に超音波画像診断装置を用いた理学療法の展開

【目的】 膝蓋骨骨折術後に、膝関節屈曲運動に伴う膝蓋骨の動態や骨折部の間隙を超音波画像診断装置(以下,エコー)を用いてリアルタイムに測定することで、骨折部の離開がないことを確認し、骨癒合を遅延させることなく、早期に膝関節機能を獲得することである。 【方法】 50歳代後半男性。右膝蓋骨骨折(Rockwood分類Transverse type)。転倒受傷し2週間のシーネ固定後、Fiber Wire を用いた観血的整復固定術(以下、ORIF)が施行された。術中の固定性は屈曲60°までは安定しているが、90°で若干の離開を確認した。そのため、理学療法処方は、術後2週まで0°〜45°、術後3週まで0°〜...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 28
Main Authors 矢口, 春木, 橋本, 貴幸, 村野, 勇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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Summary:【目的】 膝蓋骨骨折術後に、膝関節屈曲運動に伴う膝蓋骨の動態や骨折部の間隙を超音波画像診断装置(以下,エコー)を用いてリアルタイムに測定することで、骨折部の離開がないことを確認し、骨癒合を遅延させることなく、早期に膝関節機能を獲得することである。 【方法】 50歳代後半男性。右膝蓋骨骨折(Rockwood分類Transverse type)。転倒受傷し2週間のシーネ固定後、Fiber Wire を用いた観血的整復固定術(以下、ORIF)が施行された。術中の固定性は屈曲60°までは安定しているが、90°で若干の離開を確認した。そのため、理学療法処方は、術後2週まで0°〜45°、術後3週まで0°〜60°、術後4週まで0°〜90°の範囲で自動運動中心でのROM練習と等尺性筋力強化練習、荷重は膝伸展位knee brace固定にて全荷重歩行、extension lagがなくなり次第knee brace除去であった。術後に膝関節機能評価と合わせて、エコー(日立アロカメディカル社製、MyLabFive、B-mode、18MHz)を使用し、膝関節屈曲運動に伴う膝蓋骨の動態や最終屈曲時の骨折前面部の間隙(脛骨粗面矢状面上で膝蓋骨下端から中央部で各骨片前面部の距離)を測定した。なお、症例報告にあたり、発表の主旨を十分に説明し、書面にて同意を得た。 【結果】 膝関節機能評価結果は、extension lag 消失は術後2週、90度獲得は術後3.1週、正座獲得は8.9週、WBIは術後5.9週0.4(患健比45.4%)、術後8.9週0.53(患健比63.8%)であった。骨折前面部の間隙の測定結果は、膝伸展位5.2mm、術後2週5.3mm(45°)、術後3週5.2mm(60°)、術後4週5.2mm(90°)、術後5.9週5.2mm(145°)、術後8.9週5.2mm(正座)であった。なお、術後8.9週時に骨癒合良好と判断された。 【考察】 Fiber Wireを用いた膝蓋骨骨折のORIFは、長瀬らにより良好な成績が報告されている。本症例は、術中の深屈曲時に骨折部の固定性に不安定さがみられた。そのため、理学療法は、膝関節運動に伴う骨折部の離開ストレスに十分配慮しながら施行すべきであると考えた。そこで、リアルタイムに骨・軟部組織の動態を確認できるエコーを使用し、膝蓋骨の動態や骨折部の間隙を確認しながら実施したことで、骨癒合を遅延させることなく、より早期に膝関節機能の再獲得することができた。 【まとめ】 エコーは、リアルタイムかつ選択的に評価することが可能であり、術後の骨折部の固定性を確認する評価方法として有益であると思われる。
Bibliography:28
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_28