外生菌根菌ショウロ属に関する生態学的研究の現状と課題

外生菌根菌は,森林生態系において極めて重要な役割を担う菌類である.近年,気候変動をはじめとする自然環境の変化や人為的な影響により,森林生態系はかつてないほどの大きな圧力にさらされている.森林樹木の根には多種多様な生態学的な特性を持つ外生菌根菌が共生関係を築いており,これらの菌種が個々に持つ特性を理解することが,将来の環境変化への適応を予測するうえで重要である.菌類学においてDNA情報は多くの恩恵をもたらし,外生菌根菌の生態学にも大きく貢献してきた.本稿では,ショウロ属菌をモデルとしてこれまでの研究を概説し,高山生態系における事例として筆者が取り組んできた研究成果を紹介した.さらに,外生菌根菌の...

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Published in日本菌学会会報 Vol. 66; no. 1; pp. 1 - 13
Main Author 小泉, 敬彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本菌学会 01.05.2025
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ISSN0029-0289
2424-1296
DOI10.18962/jjom.jjom.R6-8

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Summary:外生菌根菌は,森林生態系において極めて重要な役割を担う菌類である.近年,気候変動をはじめとする自然環境の変化や人為的な影響により,森林生態系はかつてないほどの大きな圧力にさらされている.森林樹木の根には多種多様な生態学的な特性を持つ外生菌根菌が共生関係を築いており,これらの菌種が個々に持つ特性を理解することが,将来の環境変化への適応を予測するうえで重要である.菌類学においてDNA情報は多くの恩恵をもたらし,外生菌根菌の生態学にも大きく貢献してきた.本稿では,ショウロ属菌をモデルとしてこれまでの研究を概説し,高山生態系における事例として筆者が取り組んできた研究成果を紹介した.さらに,外生菌根菌の生態学的研究における現在の課題と今後の展望について考察した.
ISSN:0029-0289
2424-1296
DOI:10.18962/jjom.jjom.R6-8