下垂足に対する後脛骨筋移行術後、理学療法を実施した症例の経験

【はじめに】後脛骨筋移行術(TPT)は下垂足や内反尖足に対して適応があり、足関節底屈制限や足部変形のリスクがあるものの、筋力や歩行に関して良好な術後成績が報告されている。しかし、理学療法を実施した症例の経時的変化は報告が少ない。今回、TPT施行した症例の理学療法を経験したので報告する。【症例紹介】62歳男性、約1年半前、中国出張中に現地の病院でL3/4拡大後方髄核摘出術、L4/5開窓術施行し、術後より右下垂足が出現した。帰国後、他院にて加療するも改善みられなかった。その後、当院受診し、足関節背屈機能再建目的にTPT施行となった。術前の徒手筋力検査(MMT)は右膝伸展4、足関節背屈0、母趾伸展1...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 60; p. 241
Main Authors 草場, 洋平, 河端, 将司, 宮田, 徹, 斎藤, 裕, 太附, 広明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2011
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.60.0.241.0

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Summary:【はじめに】後脛骨筋移行術(TPT)は下垂足や内反尖足に対して適応があり、足関節底屈制限や足部変形のリスクがあるものの、筋力や歩行に関して良好な術後成績が報告されている。しかし、理学療法を実施した症例の経時的変化は報告が少ない。今回、TPT施行した症例の理学療法を経験したので報告する。【症例紹介】62歳男性、約1年半前、中国出張中に現地の病院でL3/4拡大後方髄核摘出術、L4/5開窓術施行し、術後より右下垂足が出現した。帰国後、他院にて加療するも改善みられなかった。その後、当院受診し、足関節背屈機能再建目的にTPT施行となった。術前の徒手筋力検査(MMT)は右膝伸展4、足関節背屈0、母趾伸展1、母趾屈曲5、関節拘縮はなく、歩行は短下肢装具を使用していた。手術手技はWatkins-Barr変法が用いられた。【経過】術後2週でウォーキングキャストにて全荷重許可、術後5週でキャスト除去、関節可動域訓練開始となった。この時点で、MMTは足関節背屈1、自動背屈可動域は-15°であり、後脛骨筋に比べ足趾伸筋が優位に収縮していた。歩行は、踵接地期がなく下垂足を呈していた。これに対して足関節背屈時、後脛骨筋が優位に収縮するよう筋力増強訓練、歩行訓練を行った。術後3ヶ月で他動関節可動域は健側と同等になり、歩行では独歩が自立したが舟状骨部の疼痛を呈した。足部アーチサポートの使用で歩行時痛が軽減したため、アーチ保持機能改善を目的として足部内在筋の筋力増強訓練を追加した。術後7ヶ月でMMTは足関節背屈2、自動背屈可動域は5°であった。歩行では舟状骨部の疼痛は消失し、踵接地期が出現、下垂足も軽減し装具が不要となった。Watkinsの評価基準はfairであった。【考察】歩行時における舟状骨部の疼痛は、後脛骨筋機能不全によるアーチ保持機能低下が要因と推察され、アーチ保持機能改善を目的とした足部内在筋の筋力増強訓練が、疼痛消失に寄与したと考えられた。本症例はTPTにより下垂足が軽減して装具が不要となり、関節拘縮を生じることなく良好な経時的変化を認めた。
Bibliography:2F-2
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.60.0.241.0