乳腺穿刺吸引細胞診における鑑別困難例の検討
【はじめに】2004年6月に乳癌取扱い規約第15版が発刊され,細胞診における報告様式も大きく変わった.当院においては,取扱い規約に先駆けて2003年7月より新報告様式を採用している.また新報告様式を導入した経験を当学会において発表し,当院での改善も行ってきた.今回われわれは,更なる精度向上を目的とし,乳腺穿刺吸引細胞診における「鑑別困難」例について,組織診断との対比および問題点について検討を加え報告する.【対象および方法】2003年7月から2007年4月に当院で乳腺穿刺吸引細胞診が施行された,検体適正例574例中,「鑑別困難」とされた78例について検討を行った.組織診が行われたものについては,...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 301 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.56.0.301.0 |
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Summary: | 【はじめに】2004年6月に乳癌取扱い規約第15版が発刊され,細胞診における報告様式も大きく変わった.当院においては,取扱い規約に先駆けて2003年7月より新報告様式を採用している.また新報告様式を導入した経験を当学会において発表し,当院での改善も行ってきた.今回われわれは,更なる精度向上を目的とし,乳腺穿刺吸引細胞診における「鑑別困難」例について,組織診断との対比および問題点について検討を加え報告する.【対象および方法】2003年7月から2007年4月に当院で乳腺穿刺吸引細胞診が施行された,検体適正例574例中,「鑑別困難」とされた78例について検討を行った.組織診が行われたものについては,細胞診と組織診を比較検討した.また細胞診については,再度鏡検し問題点の抽出を行った.【結果】検体適正574例中「鑑別困難」は78例(13.6%)であった.乳癌取扱い規約第15版によると“「鑑別困難」は検体不適正例を除いた細胞診総数の10%以下が望ましい”と付帯事項に記載されている.当院の13.6%は付帯事項に近い数値を示すものの,改善すべき数値であった.さらに「鑑別困難」の中から組織診と対比できた症例は,50例であり,組織診で良性24例,悪性26例だった.細胞診にて「鑑別困難」とされる場合は, “良悪の鑑別が困難な場合”特に重積性を伴う小型細胞の集塊があり,背景にはっきりとした裸核細胞(筋上皮細胞)が認められない場合や採取されている細胞が少なく,数個の小型細胞が索状様配列を伴う場合に分けられた.また細胞診と組織診との完全な不一致例はみられなかった.【まとめ】当院での乳腺穿刺吸引細胞診での精度向上のため「鑑別困難」例に対し,再度検討を行った.「鑑別困難」とされる要因として,そのほとんどが「不規則な重積性」「配列」「筋上皮の有無」であった.これらは,FibroadenomaまたはPapillomaとDuctal carcinoma(Papillotubular carcinoma)との鑑別や細胞量の少ない悪性いわゆるDuctal carcinoma(Scirrhous carcinoma)と良性(正常)との鑑別に苦慮していた.「鑑別困難」例は,鏡検側の要因(経験や能力など)がほとんどであり,改善すべき事項であった.今後「鑑別困難」と報告する場合は,細胞検査士および細胞診専門医とでディスカッションすること.またその旨を所見に記入し,正確に臨床側に報告することで精度の向上が期待できると考えられた. |
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Bibliography: | 2F118 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.56.0.301.0 |