吸入ステロイド薬を投与している喘息患児における臨床効果と身長発育、副腎機能への影響を含めた安全性について
小児気管支喘息の治療は吸入ステロイド薬の普及に伴い、飛躍的に改善している。しかし、使用が長期にわたる場合や高用量を使用した場合、その成長や視床下部下垂体副腎系への影響が危惧されます。今回、私たちは長期間吸入ステロイド薬を投与している患児のうち、同意の得られた10症例に改良 rapid ACTH試験を施行したので、その結果を含め、臨床的効果、副反応、身長発育などについて、報告します。 <対象>長期間吸入ステロイド薬を投与している10例で、投与期間は1年2ヶ月から6年9ヶ月で、平均4.0年であった。喘息の発症年齢は6ヶ月から4歳(平均1.8歳)、吸入ステロイド薬開始年齢は3歳から11歳...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 340 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2006
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.55.0.340.0 |
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Summary: | 小児気管支喘息の治療は吸入ステロイド薬の普及に伴い、飛躍的に改善している。しかし、使用が長期にわたる場合や高用量を使用した場合、その成長や視床下部下垂体副腎系への影響が危惧されます。今回、私たちは長期間吸入ステロイド薬を投与している患児のうち、同意の得られた10症例に改良 rapid ACTH試験を施行したので、その結果を含め、臨床的効果、副反応、身長発育などについて、報告します。 <対象>長期間吸入ステロイド薬を投与している10例で、投与期間は1年2ヶ月から6年9ヶ月で、平均4.0年であった。喘息の発症年齢は6ヶ月から4歳(平均1.8歳)、吸入ステロイド薬開始年齢は3歳から11歳(平均6.2歳)、現在の年齢は5歳から15歳(平均10.3歳)、性比は男7女3であった。吸入ステロイド薬の種類はCFC-BDP,FP-dpであった。投与量は全例で最高でBDP換算で400μg/dayであった。効果の判定は投与前後で、吸入ステロイド導入前の1年間とこの1年間の入院日数の入院日数、吸入ステロイド導入前の1年間とこの1年間の定期外外来受診日数で比較して行った。結果は全例で入院日数、定期外外来受診日数の減少が見られ、患児のQOLは著しい改善した。呼吸機能も全例で改善したが、1例でV50の低下を認めた。アレルギーの検査では投与前後で、血中IgE値、血中好酸球数を測定した。結果は血中IgE値は低下傾向を認めなかったが、血中好酸球数は有意に低下していた。身長発育については、投与前後で、身長測定を行い標準偏差で比較した。1例を除き、身長発育の明らかな抑制は認めなかった。副腎機能については投与後現在の副腎機能を改良Rapid ACTH testで行った。結果はコルチゾールの基礎値が1例で低下していたが、ACTHに対する反応性は全例で良好であった。 <まとめ> 1.吸入ステロイド薬投与により、全例でQOLの改善を認めた。呼吸機能も改善したが、1例でV50の低下があり、治療方法の検討、注意深い観察が必要であると思われた。 2.総IgE値は低下傾向は認めなかったが、血中好酸球数は有意に低下していた。 3.1例を除き、その他の症例では身長発育の明らかな抑制は認められなかった。 4.改良rapid ACTH testによる副腎機能検査ではコルチゾールの基礎値が1例で軽度に低下していたが、反応性は全例で良好であった。 5.吸入ステロイド薬はQOLの改善に有効であった。一方、1例で身長発育抑制の疑いとコルチゾールの基礎値の軽度低下が認められたが、他の9例では副反応、身長発育、副腎機能では明らかな異常は認められなかった。 |
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Bibliography: | 2G301 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.55.0.340.0 |