注射薬抗菌薬使用状況と感受性から考える抗菌薬適正使用の推進

〈緒言〉近年、医療現場にて抗菌薬の不適切な使用によるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)等の耐性菌の出現が、大学病院等での感染例として度々報道され、問題視されている。 当院においても、2006年9月よりMDRP(多剤耐性緑膿菌)が7例確認された。抗菌薬使用量と細菌の感受性には相関関係があると言われており、MDRPの出現の背景に抗菌薬の乱用が一つの原因とされている。耐性菌を作り出さないためには、抗菌薬適正使用が医療現場において必然的要素である。そのためにまず「届出制」等の特定の抗菌薬に使用制限をかける施設も多い。しかし、...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 116
Main Authors 鴨志田, 聡, 長峰, 裕二, 伊師, 嗣博, 和泉, 裕一, 樗木, 智聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.57.0.116.0

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Summary:〈緒言〉近年、医療現場にて抗菌薬の不適切な使用によるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)等の耐性菌の出現が、大学病院等での感染例として度々報道され、問題視されている。 当院においても、2006年9月よりMDRP(多剤耐性緑膿菌)が7例確認された。抗菌薬使用量と細菌の感受性には相関関係があると言われており、MDRPの出現の背景に抗菌薬の乱用が一つの原因とされている。耐性菌を作り出さないためには、抗菌薬適正使用が医療現場において必然的要素である。そのためにまず「届出制」等の特定の抗菌薬に使用制限をかける施設も多い。しかし、本来の適正使用とは、単に使用量の問題だけではなく、抗菌薬使用前の細菌学的検索などの感染症治療における基本的要素も含まれる。今回、適正使用の重要性を再確認するための第一歩として、当院における薬剤使用量と感受性の関係を調査した。 〈方法〉対象期間は2002年1月から2007年12月までの6年間である。調査期間中に使用された当院採用の注射抗菌薬製剤33品目について年間の使用量を集計、そのデータより抗菌薬使用密度(以下AUD)を算出した。AUDの計算方法は図1を参照。なお、当院採用薬の中でDDDが定められていないものに関しては、添付文書上の一日最大量を用いた。感受性データは調査期間中に行われた細菌学的検索のデータを元に集計した。 〈結果〉調査の結果、2004年から2006年にかけてカルバペネム系抗菌薬全体のAUDは、15.58→27.47へ増加し、その間の緑膿菌でのイミペネムの感受性は86.2%→39.8%と低下した。これによりカルバペネム系抗菌薬の使用量増加は感受性を減少させることが示唆された。また2007年7月から2007年12月までのカルバペネム系のAUDは18.35と2006年の27.47より減少しており、緑膿菌の感受性も70%代まで回復した。よって抗菌薬使用量が減少すれば感受性も回復する可能性があり、ICTなどの活動により抗菌薬適正使用がさらに推進されれば、耐性化をある程度コントロールできる可能性があることが示唆された。
Bibliography:1F068
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.57.0.116.0