口腔扁平上皮癌の組織型におけるIV型コラーゲンα1~6鎖とMMPの局在に関する研究

「緒言」扁平上皮癌はその前癌病変として上皮異形成・上皮内癌を経て発生する. 前癌病変の状態から基底膜の消失が開始され基底膜が完全に消失した後, 癌細胞の浸潤が始まるという. 上皮下深部へ浸潤を示す癌において癌胞巣周囲に基底膜を認めるが, 胞巣周囲の基底膜については存在の有無と浸潤性, 転移能との関連は報告されているものの1,2), 形成分解に関してはあまり重要視されていないのが現状である. 1980年Liottaらにより癌の浸潤ステップには3つの段階が報告されているが, その3つの段階とは, 細胞接着の減弱, 基底膜の消失および周囲間質の分解, 癌細胞の運動であり, 基底膜や周囲間質の消失には...

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Published inJournal of Hard Tissue Biology Vol. 13; no. 3; pp. 125 - 130
Main Authors 川上, 敏行, 永井, 教之, 長塚, 仁, 玉村, 亮, 佐渡, 義一, 内藤, 一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 硬組織再生生物学会 2004
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ISSN1341-7649
1880-828X
DOI10.2485/jhtb.13.125

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Summary:「緒言」扁平上皮癌はその前癌病変として上皮異形成・上皮内癌を経て発生する. 前癌病変の状態から基底膜の消失が開始され基底膜が完全に消失した後, 癌細胞の浸潤が始まるという. 上皮下深部へ浸潤を示す癌において癌胞巣周囲に基底膜を認めるが, 胞巣周囲の基底膜については存在の有無と浸潤性, 転移能との関連は報告されているものの1,2), 形成分解に関してはあまり重要視されていないのが現状である. 1980年Liottaらにより癌の浸潤ステップには3つの段階が報告されているが, その3つの段階とは, 細胞接着の減弱, 基底膜の消失および周囲間質の分解, 癌細胞の運動であり, 基底膜や周囲間質の消失にはマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinases, MMPs)が関与している3). 基底膜はIV型コラーゲン, ラミニン, ヘパラン硫酸, エンタクチン, フィブロネクチンの5つの主成分から構成され, そのうちIV型コラーゲンは骨格構造を形成し基底膜において中心的な役割を果たしている. IV型コラーゲンは3本のα鎖の三重らせん構造から成る1分子のIV型コラーゲンを形成している, 従来, IV型コラーゲンのα鎖は, α1鎖, α2鎖の2種類が知られており4), , これらのα鎖は, 体組織中の基底膜に広く局在が認められ, IV型コラーゲンの指標としての役割を果たしてきた. 近年になり, IV型コラーゲンα鎖には, α1鎖, α2鎖以外にα3鎖からα6鎖までの計6種類のα鎖が存在し, 遺伝子的多様性が明らかになってきている4-8).
ISSN:1341-7649
1880-828X
DOI:10.2485/jhtb.13.125