サリドマイドの適正使用における薬剤師のかかわり

【はじめに】  サリドマイドは、鎮静・睡眠薬として世界中で使用されたが、胎児寄形という大きな薬害を引き起こし、販売が中止された薬剤である。近年、アメリカで難治性多発性骨髄腫に対し治療効果があると報告され、患者の個人輸入によりサリドマイドが使用されている。しかし、その管理は必ずしも適正であるとはいえず、再びサリドマイドによる被害が発生する危険性が否定できない状況であり、昨年12月に、厚生労働省より「多発性骨髄腫に対する、サリドマイドの適正使用ガイドライン」が出された。当院では、それ以前からサリドマイド治療がスタートしており、我々もサリドマイドの管理と運用に積極的に関わってきたので、その運用方法と...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 245
Main Authors 大野, 愛, 勝見, 章男, 伊藤, 達也, 三浦, 崇則, 小野, 芳孝, 岩井, 友香里, 加藤, 智則
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2005
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.54.0.245.0

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Summary:【はじめに】  サリドマイドは、鎮静・睡眠薬として世界中で使用されたが、胎児寄形という大きな薬害を引き起こし、販売が中止された薬剤である。近年、アメリカで難治性多発性骨髄腫に対し治療効果があると報告され、患者の個人輸入によりサリドマイドが使用されている。しかし、その管理は必ずしも適正であるとはいえず、再びサリドマイドによる被害が発生する危険性が否定できない状況であり、昨年12月に、厚生労働省より「多発性骨髄腫に対する、サリドマイドの適正使用ガイドライン」が出された。当院では、それ以前からサリドマイド治療がスタートしており、我々もサリドマイドの管理と運用に積極的に関わってきたので、その運用方法と現在の状況を報告する。 【運用方法】  サリドマイドが患者の輸入手続により手元に届いたら、すぐに薬剤・供給部門の専用の保管場所に保管し、サリドマイド管理用ファイルを作成する。管理用ファイルには、患者名、患者ID、生年月日、管理ファイル作成日、作成者、依頼医師名、入庫日、入庫数、ロット番号、残数を記入している。サリドマイドは麻薬と同等の扱いで調剤や受け渡しを行ない、常に施錠された場所に保管するなど厳重に管理している。また、サリドマイドによる治療は入院中に開始されるため、病棟薬剤師が服用前に服薬指導を行なうこととした。その際に、用法、用量、副作用に加え、サリドマイドの社会的な背景をお話し、服用中の飲み残しがあった場合、服用が中止になった場合は必ず薬剤・供給部門への返却をお願いした。また、自宅での管理方法の指導も行ない、誤って第三者がサリドマイドを服用することがないように十分に説明を行なった。 【実際の状況】  現在内服中の患者は、体調不良等により飲み残しが発生した際に、薬剤・供給部門の窓口に飲み残し分をすべて返却している。患者自身がサリドマイドの返却の意義を充分に理解しており、不要なサリドマイドはすべて回収され、この薬物が適正に管理されているといえる。 【おわりに】  サリドマイドを薬剤・供給部門で厳重に管理し、患者へ十分な説明を行なうことで、他に薬害を出すことなく安全に治療を進めることができている。過去の経緯から、サリドマイドが適正に使用されないことで、全面的に使用が制限されてしまう事態を招く可能性もある。サリドマイドの承認を待つ患者も多い中、その適正使用に薬剤師が関わる意義は大きいと考える。今回の経験を生かし、他の薬剤の適正使用にも薬剤師が積極的に関わり、患者の治療の選択肢の幅を広げていけたらと思う。
Bibliography:2G11
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.54.0.245.0