LAMP法を用いた百日咳菌DNA検出法の有用性の検討

〈緒言〉近年,百日咳の非典型例やワクチン効果の衰弱による成人罹患者の増加が報告され,重症化しやすいワクチン未接種乳児への感染が懸念されている。百日咳菌の分離培養は診断法のゴールドスタンダードであるが,手間がかかり日常診療で実施されている施設は少ない。一方,血清学的検査は迅速性に問題がある上,ワクチン既接種者では判定が困難となる。近年,検出感度や特異性が高く,なおかつ簡便で迅速なLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法と呼ばれる遺伝子増幅技術が開発された。今回,百日咳の診断法におけるLAMP 法の有用性を検討したので報告する。 〈対象と方法〉20...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 58; p. 256
Main Authors 西尾, 一美, 安田, 直子, 尾崎, 隆男, 舟橋, 恵二, 西村, 直子, 中根, 一匡, 岩田, 泰, 後藤, 武雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2009
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.58.0.256.0

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Summary:〈緒言〉近年,百日咳の非典型例やワクチン効果の衰弱による成人罹患者の増加が報告され,重症化しやすいワクチン未接種乳児への感染が懸念されている。百日咳菌の分離培養は診断法のゴールドスタンダードであるが,手間がかかり日常診療で実施されている施設は少ない。一方,血清学的検査は迅速性に問題がある上,ワクチン既接種者では判定が困難となる。近年,検出感度や特異性が高く,なおかつ簡便で迅速なLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法と呼ばれる遺伝子増幅技術が開発された。今回,百日咳の診断法におけるLAMP 法の有用性を検討したので報告する。 〈対象と方法〉2008年4月~2009年3月の1年間に,激しい咳や長引く咳などの咳を主訴に当院小児科を受診した316例(4例は重複)から鼻腔ぬぐい液316検体を採取し,百日咳菌のLAMP 法によるDNA 検出と分離培養を行った。LAMP 法はLoopamp リアルタイム濁度測定装置RT―160C(栄研化学)を用いて行い,国立感染研細菌第二部で作製されたプライマーを使用した。分離培養はチャコール寒天培地を用い,画線培養後37℃湿潤状態で1週間観察した。培地上に発育した半球状に隆起する真珠様コロニーを釣菌し,グラム陰性桿菌,オキシダーゼ試験陽性,百日咳_I_相菌免疫血清凝集のすべてに該当したものを百日咳菌と同定した。 〈結果と考察〉316例中20例(6.3%)がDNA 陽性であり,百日咳と確定診断した。20例中15例から百日咳菌が分離され,分離陽性例は全てDNA も陽性であった。確定診断された20例中17例において,ペアまたは単血清の百日咳凝集素価を測定し,「百日咳の血清診断基準案」(蒲池一成,岡田賢司:小児科50,2009)に従って血清診断できたのは41.2%(7/17)であった。LAMP 法の感度は分離培養法より優れており,百日咳の有用な病原診断法と考えられた。
Bibliography:27-22
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.58.0.256.0