当院において10年以上長期followできている非機能性下垂体腺腫

近年、脳神経外科の分野においても、患者のQOLの観点から、可能な限りless invasiveな治療戦略が好まれる傾向にある。その代表的な脳外科手術手技として経蝶形骨洞手術が挙げられる。一般的に下垂体病変、特にトルコ鞍内に留まる病変に対しては絶対的に経蝶形骨洞手術の適応であり、適応疾患として下垂体腺腫が代表的である。下垂体腺腫の中でも比較的大きなものは鞍上部に進展する場合があり、経蝶形骨洞手術か、開頭術かの選択が問題となるが、sellar plastyを行わないopen sellar methodを用いた経蝶形骨洞手術を行うことによって、鞍上部進展腫瘍が時間の経過とともに鞍内に下降し、2期的な...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 210
Main Authors 岡田, 健, 山本, 直人, 棚澤, 利彦, 大須賀, 浩二, 牧野, 一重, 遠藤, 乙音
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2006
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.210.0

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Summary:近年、脳神経外科の分野においても、患者のQOLの観点から、可能な限りless invasiveな治療戦略が好まれる傾向にある。その代表的な脳外科手術手技として経蝶形骨洞手術が挙げられる。一般的に下垂体病変、特にトルコ鞍内に留まる病変に対しては絶対的に経蝶形骨洞手術の適応であり、適応疾患として下垂体腺腫が代表的である。下垂体腺腫の中でも比較的大きなものは鞍上部に進展する場合があり、経蝶形骨洞手術か、開頭術かの選択が問題となるが、sellar plastyを行わないopen sellar methodを用いた経蝶形骨洞手術を行うことによって、鞍上部進展腫瘍が時間の経過とともに鞍内に下降し、2期的な経蝶形骨洞手術による鞍内操作によって全摘出が可能となる。鞍上部進展腫瘍が全て鞍内に下降してくるわけではなく、この場合は開頭術も選択する必要がある。また海綿静脈洞壁または海綿静脈洞内に側方進展する例では、手術による全摘出が技術的に困難となることが多い。全摘出したと考えられた下垂体腺腫において長期経過中に再発する例もまま経験することがあるが、この海綿静脈洞壁に浸潤した腫瘍が再増大することも想定される。このような症例には、適宜放射線照射(分割照射またはガンマナイフ)を併用し、腫瘍抑制効果が期待できる。また、下垂体腫瘍の特性によっては、ドーパミン作動薬の投与により腫瘍増殖抑制効果がやはり期待できることがあり、このような薬物療法も適宜併用することができる。  我々は、非機能性下垂体腺腫における治療戦略として、鞍上部進展例や海綿静脈洞進展例においても、まずはopen sellar methodを用いた経蝶形骨洞手術によりトルコ鞍内の腺腫を可及的に摘出し、一旦経過観察とし、鞍上部進展部分が鞍内に下降した場合は再度経蝶形骨洞手術を行い、下降しない場合は開頭術を、海綿静脈洞進展例または鞍内再発例に対しては放射線照射を併用している。当院では、同一術者による非機能性下垂体腺腫手術例で長期followできている症例が、6例あり(男性2人、女性4人)、follow up期間は10年から23年(平均15年)であった。その内、2回以上経蝶形骨洞手術を行った症例は3例、鞍上部進展例に対し開頭術を要した症例は1例、ドーパミン作動薬を服用させている症例は2例、放射線照射を行った症例は4例であった。全例において腫瘍のコントロールは良好であり、また放射線照射を行った症例においても下垂体機能障害は軽度で通常のホルモン補充療法が必要な程度であった。全例において患者自身のQOLは保たれており、満足されている。このような長期follow upできた非機能性下垂体腺腫の報告は少なく、症例数は少ないながら貴重と考え、ここに報告する。
Bibliography:2C20
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.210.0