オマリー筋解離術変法を施行し、術後の筋力低下に着目した症例

〈はじめに〉オマリー筋解離術は、比較的若年者の進行期から末期股関節症で臼蓋形成不全が軽度で骨質が良好な症例に対し、大腿直筋、腸腰筋、内転筋腱、腸骨大腿靭帯を切離する手術法である。手術の目的としては、股関節周囲筋の高度緊張による拘縮状態の改善を図ることで、関節内圧の軽減を図ることとされている。今回、オマリー筋解離術の変法として大腿直筋、腸骨大腿靭帯の切離と関節切開による骨棘の除去を施行した患者の理学療法を経験し、術後の筋力低下に着目した症例を報告する。〈症例〉35歳男性。26歳時に両側大腿骨頭壊死を呈し、両側前方回転骨切り術を施行。27歳時には左人工股関節全置換術を施行。34歳頃から右股関節痛、...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 292
Main Author 野瀬, 友裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.57.0.292.0

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Summary:〈はじめに〉オマリー筋解離術は、比較的若年者の進行期から末期股関節症で臼蓋形成不全が軽度で骨質が良好な症例に対し、大腿直筋、腸腰筋、内転筋腱、腸骨大腿靭帯を切離する手術法である。手術の目的としては、股関節周囲筋の高度緊張による拘縮状態の改善を図ることで、関節内圧の軽減を図ることとされている。今回、オマリー筋解離術の変法として大腿直筋、腸骨大腿靭帯の切離と関節切開による骨棘の除去を施行した患者の理学療法を経験し、術後の筋力低下に着目した症例を報告する。〈症例〉35歳男性。26歳時に両側大腿骨頭壊死を呈し、両側前方回転骨切り術を施行。27歳時には左人工股関節全置換術を施行。34歳頃から右股関節痛、関節可動域(以下ROM)制限が出現してきたため、今回筋解離術を施行した。〈術前評価〉ROM右股関節屈曲40°外転35°内旋-10°その他両側共に著明な制限はなかった。日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下JOA score)では右股関節の疼痛20点、ROM 12点、歩行能力15点、日常生活活動(以下ADL)16点の合計63点であった。筋力はアニマ社製・徒手筋力測定装置uTas MT-1を使用。股・膝関節各方向の等尺性筋力を測定し、股関節屈曲および膝関節伸展筋力において左右差はなかった。〈理学療法内容〉術後2週間ベッド上にて介達牽引を実施。その間は愛護的なROM訓練および切離筋以外の筋力訓練を実施し、術後2週目より切離筋に対する筋力訓練を開始した。荷重は術後2週目より1/3を開始し、術後8週目で全荷重となり、術後9週目で独歩にて退院となった。退院後も筋力訓練の継続を指導した。〈術後評価〉術後9週時点においてROM右股関節屈曲90°外転40°内旋0°と改善。JOA scoreでは右股関節の疼痛30点、ROM 17点、歩行能力15点ADL 18点の合計80点と改善。筋力において、切離筋以外の筋群は、術後4週時点で術前に比較して増大した筋が幾つかみられ、術後8週時点においては術前に比較して全て増大していた。一方、切離筋の影響を受ける股関節屈曲および膝関節伸展筋力は、術後4週時点で術前に比較して半減していた。術後8週時点においては、術後4週に比較して股関節屈曲筋力は変化せず、膝関節伸展筋力は若干の増大が認められた。〈考察〉筋解離術を施行した患者では、除痛と拘縮の改善により関節摺動面のリモデリングが生じ、関節面の適合性が改善され、中長期に渡り安定した除痛が期待されると考えられている。本症例においてもROMおよび疼痛に改善が認められたのは、骨棘除去に合わせて筋解離による関節内圧の軽減がなされ、関節面の適合性が改善されてきた結果によるものと思われる。筋力において、術後8週時点で切離筋以外の筋群が順当に増強したのは筋力訓練の手法が適切であった結果であると思われる。一方、切離筋である大腿直筋の影響を受ける股関節屈曲および膝関節伸展筋力の低下が著しく残存した。このことは、先行研究において切離筋の筋力回復は約4~6ヶ月後から始まり、術前の筋力に戻るまで約1年を要するとの報告があり、本症例でも同様の経過を辿っているものと推測される。〈おわりに〉退院後も筋力訓練を継続した上で定期的な筋力測定を行い、筋力回復の推移についても本学会で報告する予定である。
Bibliography:2F245
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.57.0.292.0