崩壊した地域医療の再生

JA長野厚生連新町病院は長野県北部の上水内郡信州新町にあります。長野市中心部から車で犀川沿いに30分程に位置します。鉄道はありません。昭和37年に開設以来既に44年が経過し施設の老朽化も進んでいます。昭和63年にはへき地中核病院として指定を受けています。(現へき地医療拠点病院) 診療圏内は1町2村その周辺を囲む中山間地がほとんどで、少子高齢化と人口減少が顕著です。高齢化率は既に40%を越え、独居老人・老人夫婦世帯も多く家庭介護力や経済力の乏しい地域で、町村合併も暗礁に乗り上げています。 当院の許可病床数は140床で、一般100床、療養型病床40床(医療療養型20床、介護療養型20床)です。訪問...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 364
Main Author 小瀬川, 和雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.56.0.364.0

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Summary:JA長野厚生連新町病院は長野県北部の上水内郡信州新町にあります。長野市中心部から車で犀川沿いに30分程に位置します。鉄道はありません。昭和37年に開設以来既に44年が経過し施設の老朽化も進んでいます。昭和63年にはへき地中核病院として指定を受けています。(現へき地医療拠点病院) 診療圏内は1町2村その周辺を囲む中山間地がほとんどで、少子高齢化と人口減少が顕著です。高齢化率は既に40%を越え、独居老人・老人夫婦世帯も多く家庭介護力や経済力の乏しい地域で、町村合併も暗礁に乗り上げています。 当院の許可病床数は140床で、一般100床、療養型病床40床(医療療養型20床、介護療養型20床)です。訪問看護ステーションとデイケアを併設してこの地域で唯一の病院として保健・医療・福祉事業を担っています。常勤医は6名、非常勤医師を合わせた常勤換算数は13.2名です。 当院の経営状況は、平成17年以降下降線をたどっていますが、原因は一過性のものでなく構造的なもので、次の3点であると考えています1点は、少子高齢化と地域の著しい人口減少、2点目は新医師臨床研修制度施行で医師不足が更に加速したこと、3点目は医療制度改革に伴う診療報酬の引下げです。特に高齢者の診療報酬の引き下げは大きく影響しています。 外来患者数は平成11年をピークに減少を続け平成18年迄に2万8千人の減少です。入院患者数は年間4万8千人前後で安定的に推移していますが社会的入院患者も多く、診療報酬引下げの影響を受け入院収入が大きく減収しました。 このような状況下では病院の存続にはダウンサイジングもやむと考え、第三者機関に当院の経営調査診断業務を依頼しました。その結果、一般病床の削減だけでは経営改善は困難で、削減する病床を他の形態に転換する必要性を指摘され、理事会への報告を経て、一病棟を回復期リハ病棟に、療養病床を老健施設に転換する検討を始めました。しかし診療圏内で該当患者を確保することは非常に困難であるため、近隣の急性期病院との連携を強化しそれぞれの医療機能の役割分担を明確にした相互協力体制の構築が不可欠な課題です。 当院は、プライマリーケアから1.5次救急と慢性期医療を担うというスタンスを明確にして病院存続を図ることが地域医療に貢献できる最低限のことと考えています。そのためには、近隣する厚生連病院との連携の密度をより濃くしていくことも重要ですので、厚生連2病院での経営統合も視野に入れた組織的な連携体制構築の検討も並行して進めていくことにしています。
Bibliography:sympo-2
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.56.0.364.0