当院における針刺し切創事故の解析とその対策

【緒言】  医療従事者の血液感染症の原因には、針刺し切創事故が最も多い。医療従事者の針刺し切創事故が増加する傾向にあり、院内感染対策上、重要課題の一つとなっている。平成11年4月からの当院での針刺し切創事故報告を集計・解析し、その結果に基づいて事故を減少させるための対策を検討したので報告する。 【方法】  1.現行で実施されている職業感染防止のための取り決めを確認し、採用されている器材の針刺しの防止に配慮した安全器材への変更を検討した。  2.今までの感染症ごとの針刺し切創事故発生時の対応(フローチャート)をまとめ、新しい針刺し切創事故対応マニュアルを作成した。  3.過去5年間のデータの解析...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 135
Main Authors 尾崎, 隆男, 加藤, 幸男, 長谷川, しとみ, 大榮, 薫, 森下, 憲一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2005
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.54.0.135.0

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Summary:【緒言】  医療従事者の血液感染症の原因には、針刺し切創事故が最も多い。医療従事者の針刺し切創事故が増加する傾向にあり、院内感染対策上、重要課題の一つとなっている。平成11年4月からの当院での針刺し切創事故報告を集計・解析し、その結果に基づいて事故を減少させるための対策を検討したので報告する。 【方法】  1.現行で実施されている職業感染防止のための取り決めを確認し、採用されている器材の針刺しの防止に配慮した安全器材への変更を検討した。  2.今までの感染症ごとの針刺し切創事故発生時の対応(フローチャート)をまとめ、新しい針刺し切創事故対応マニュアルを作成した。  3.過去5年間のデータの解析し、126件の針刺し切創事故報告事例において、医療従事者の職種、年齢、発生時間帯、発生場所、どのような過程で発生したかなどを把握した。また、集計・解析結果は院内全部署に報告した。  4.「医療施設における院内感染の防止について(厚生労働省医政指発第0201004号平成17年2月1日)」に記載された職業感染防止に関する通知の遵守を確認した。 【結果および考察】  1.使用済みの注射針に再びキャップするいわゆる「リキャップ」の禁止、針刺し事故防止機構付翼状針および携帯用針捨てボックスの活用を確認した。平成15年11月、誤刺防止機構付き血液ガス測定用採血キットを採用した。平成16年2月、ランセットによる針刺し事故の多発をうけ、針刺し事故防止機構付きの穿刺具に切り替えた。  2.平成15年12月、針刺し切創事故対応マニュアルで事故発生時の対応を詳細に規定し、針刺し切創事故が発生した場合、報告者全員に受診と感染症の抗体検査実施を規定した。  3.受傷者は主に看護師(84.9%)であった。20歳代(62.7%)、で経験年数(5年以下で56%)が浅い人、採血や点滴操作の集中する午前9時 - 12時と午後3時 - 4時(62.7%)、病室(36.5%)やナースステーション内(18.3%)での発生が多かった。ディスポ注射器(31.7%)や翼状針(25.4%)により、リキャップ時(18.3%)や使用後廃棄までの間(31.7%)に針刺し切創事故の頻度が高かった。複数回の受傷者は、看護師がほとんどで21.6%(21名)を占めた。その解析結果を教育指導へ反映させ、また、看護師の主導による「針刺し事故ゼロ運動」を開始した。  4.厚生労働省からの通知に従い、点滴の際に使用する翼状針を針刺し事故防止機構付のものに全面的に切り替え、さらに携帯用針捨てボックスの使用枠拡大を実施した。針刺し事故防止機構付翼状針と携帯用針捨てボックスの使用の徹底により、今後の針刺し事故報告数の減少が期待される。  現在、過去6年の針刺し切創事故の解析をさらに進めている。今後の課題として、針刺し事故防止機構付留置針の採用を検討中である。 【まとめ】  当院の針刺し切創事故報告数は、平成15年度の30件から平成16年度には15件と半減した。今後も、医療従事者の職業感染防止のために、さらなる対策を講じていく所存である。
Bibliography:1K10
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.54.0.135.0