高齢者における冷罨法の効果の検証

<はじめに>冷罨法は解熱効果を得るために頭部、腋窩、鼠径部を冷却し行われている。しかし、そのほとんどが経験的に行われている看護技術であり、解熱効果や生体に及ぼす影響はあまり知られていない。また、解熱の手段として冷罨法のほか解熱鎮痛剤を使用することがあるが、近年、解熱鎮痛剤の使用は生体に多様な影響を及ぼすことがわかった。とくに生体機能の低下した高齢者には、様々な弊害が生じる恐れがあるため、解熱鎮痛剤の使用は慎重に行わなくてはならない。一方で、高齢者の発熱は脱水、不快感、新陳代謝の亢進により体力が消耗するなど、様々な影響を及ぼすため、効果的な解熱方法を検討する必要がある。そこで看護ケアとして行って...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 197
Main Authors 西脇, 純子, 田中, 富美子, 松田, 知子, 浅野, 正絵, 遠藤, 利子, 日高, 幸代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2006
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.197.0

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Summary:<はじめに>冷罨法は解熱効果を得るために頭部、腋窩、鼠径部を冷却し行われている。しかし、そのほとんどが経験的に行われている看護技術であり、解熱効果や生体に及ぼす影響はあまり知られていない。また、解熱の手段として冷罨法のほか解熱鎮痛剤を使用することがあるが、近年、解熱鎮痛剤の使用は生体に多様な影響を及ぼすことがわかった。とくに生体機能の低下した高齢者には、様々な弊害が生じる恐れがあるため、解熱鎮痛剤の使用は慎重に行わなくてはならない。一方で、高齢者の発熱は脱水、不快感、新陳代謝の亢進により体力が消耗するなど、様々な影響を及ぼすため、効果的な解熱方法を検討する必要がある。そこで看護ケアとして行っている冷罨法に着目し、その効果を検討することとした。 <方法>  1.サーモグラフィーを用いた皮膚温の変化の測定。20代の看護師3名を対象とし、測定前にサーモグラフィーで皮膚温の測定を行い、頭部、腋窩、鼠径部、腋窩と鼠径部の4つの部位別に冷罨法を施行し、1時間後に部位別に周辺の皮膚温の測定を行う。  2.入院患者のうち安静臥床が保て、研究の主旨を説明し同意を得られた70歳以上の発熱者(37.5℃以上)30名を対象として頭部冷罨法(頭部群)、腋窩冷罨法(腋窩群)、鼠径部冷罨法(鼠径部群)、腋窩と鼠径部冷罨法(腋窩&鼠径部群)の4つの部位別に冷罨法を施行し、温度変化を測定し比較検討する。頭部、鼠径部は腋窩で、腋窩、腋窩と鼠径部は耳式体温計でそれぞれ1時間後、2時間後に体温の測定を行い、各々30症例のデータ収集をし比較検討した。どちらも頭部には、氷枕にタオルを巻いたものを使用し、腋窩と鼠径部には200mlのプラスチックボトルに水を入れ冷凍させた物にタオルを巻き使用した。 <結果>  1.サーモグラフィーの測定結果より、頭部冷罨法は頭部のみ冷却され、体幹部には変化は認められなかったが、腋窩冷罨法は腋窩周囲が特に変化が強く認められ、上肢、胸部まで温度変化を認めた。また、鼠径部冷罨法では鼠径周囲が特に変化が強く認められた。腋窩と鼠径部の冷罨法では温度変化は腋窩と鼠径部の両方を認めた。  2.冷罨法による効果比較(図2)より、各群の時間ごとの体温変化は頭部群、鼠径部群は有意差がなく、腋窩群、腋窩&鼠径部群は有意差を認めた。また各群間では、頭部・腋窩群間、頭部・腋窩&鼠径部群間、鼠径部・腋窩群間、鼠径部・腋窩&鼠径部群間に有意差を認めた。 <結論>頭部冷罨法は、解熱効果には有効ではない。腋窩冷罨法は、解熱効果に有効である。鼠径部冷罨法のみでは、解熱効果は有効ではない。腋窩・鼠径部冷罨法は解熱効果に有効である。
Bibliography:2C07
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.197.0