黄色肉芽腫性腎盂腎炎の2例

<緒言>黄色肉芽腫性腎盂腎炎は比較的稀な疾患であり画像上腎細胞癌との鑑別が困難な疾患である。今回、2症例を経験したので報告する。 <症例1>31歳、女性 (主訴)血尿 (家族歴)特に (既往歴)糖尿病  (現病歴)糖尿病にて内科通院中、平成13年12月20日より血尿あり、12月21日に当科を紹介された。受診時には発熱、腰部痛もあり既に内科にて腎盂腎炎として抗生剤が投与されていた。 (現症)身長167cm、体重57kg、体温36.2℃、脈拍61/分、血圧132/72。胸腹部に異常を認めぬものの、下腹部は膨満し、左上腹部に圧痛を認めた。 (検査所見)尿検査では膿尿を認めるものの細菌尿は認められず培...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 111
Main Authors 久保田, 全哉, 西脇, 伸二, 増栄, 成泰, 横井, 繁明, 河田, 幸道, 岡野, 学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2005
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.54.0.111.0

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Summary:<緒言>黄色肉芽腫性腎盂腎炎は比較的稀な疾患であり画像上腎細胞癌との鑑別が困難な疾患である。今回、2症例を経験したので報告する。 <症例1>31歳、女性 (主訴)血尿 (家族歴)特に (既往歴)糖尿病  (現病歴)糖尿病にて内科通院中、平成13年12月20日より血尿あり、12月21日に当科を紹介された。受診時には発熱、腰部痛もあり既に内科にて腎盂腎炎として抗生剤が投与されていた。 (現症)身長167cm、体重57kg、体温36.2℃、脈拍61/分、血圧132/72。胸腹部に異常を認めぬものの、下腹部は膨満し、左上腹部に圧痛を認めた。 (検査所見)尿検査では膿尿を認めるものの細菌尿は認められず培養検査でも陰性であった。また、細胞診もClass1だった。血液検査では血沈の亢進、CRPの上昇および高γ-globulin血症が見られた。超音波検査では左腎上極に直径3cmほどのlow echoic areaが認められた。DIPでは腎杯の変形は見られぬものの左側尿管のうっ滞が認められ、残尿も多かった。CTでは左腎上極に造影もrim-enhancementもみられず内部にlow density areaが混在した腫瘤が認められた。MRIではT2強調画像で左腎上極に内部が不均一な部分を認め造影検査でもこの部分は造影されなかった。Gaシンチでは左腎付近に集積像を認めた。 (経過)以上の所見より炎症性腫瘤の可能性が高いと考えたが腎腫瘍も否定できず、年明けに生検を行った。病理所見は泡沫細胞が特徴的な肉芽組織であり悪性所見は見られなかった為、化学療法を継続したところ腫瘤は縮小し解熱がみられた。 <症例2>86歳、男性 (主訴)右背部痛 (家族歴)特に (既往歴)66歳 膀胱癌にて膀胱全摘術、81歳、86歳 腸閉塞 (現病歴)腸閉塞を繰り返すために内科通院中、平成16年3月25日より右背部痛あり、また同部の手拳大の腫瘤にも気付き、3月26日当科へ紹介された。 (現症)身長160 cm、体重44kg、体温36.1℃、脈拍78/分、血圧110/72、胸部には異常を認めぬものの、下腹部には正中に切開創、右側に回腸導管のストーマが造設されていた。 (検査所見)尿検査では異常を認めぬものの血液検査では血沈の亢進、CRPの上昇および高γ-globulin血症が見られた。DIPでは右腎は描出されず、CTでは巨大な水腎症を呈しておりこれに連続して背側皮下に達する腫瘤を認めた。MRIでも同様に内部不均一な腫瘤が見られた。Gaシンチでは右腎付近に集積像を認めた。 (経過)経皮的に腎盂造影を行なったところ腎内から尿管への流出は見られず、穿刺液は灰褐色の膿であり細菌培養で緑膿菌が検出された。腫瘤の生検では泡沫細胞に富む炎症組織であった。このため化学療法を継続したところ背部の腫瘤は消失した。 <考察>本症は腎細胞癌との鑑別診断が難しく腎摘術になってしまう症例が多い。しかし画像所見ばかりでなく、検査所見、臨床経過などを総合的に検討したうえで的確に診断し、場合により積極的に生検も行ない慎重な治療法の決定が望まれる。
Bibliography:1J02
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.54.0.111.0