神経性食思不振症に合併した若年性脳梗塞に対するリハビリテーションの経験

【はじめに】 神経性食思不振症(anorexia nervosa;AN)は,身体像(body image)の障害や強いやせ願望,体重増加恐怖などに基づく,不食や摂食制限あるいは自己誘発性嘔吐や下剤・利尿剤乱用を伴う過食といった食行動異常のために著しいやせを来し,その程度に応じて様々な身体的合併症や精神症状を呈する.今回,われわれは本邦でもほとんど症例報告の無い,ANに合併した若年性脳梗塞に対してリハビリテーションを行う機会を得ることができ,その経験を報告する. 【症例紹介】 症例は20代前半,女性.平成11年よりダイエットを始め,過食嘔吐から拒食に移行.平成17年6月当院心療内科初診.以降,外...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 12
Main Authors 香川, 賢司, 大久保, 裕史, 嶋, 悠也, 岡田, 仁, 玉田, 良樹, 田村, 奈穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_12

Cover

More Information
Summary:【はじめに】 神経性食思不振症(anorexia nervosa;AN)は,身体像(body image)の障害や強いやせ願望,体重増加恐怖などに基づく,不食や摂食制限あるいは自己誘発性嘔吐や下剤・利尿剤乱用を伴う過食といった食行動異常のために著しいやせを来し,その程度に応じて様々な身体的合併症や精神症状を呈する.今回,われわれは本邦でもほとんど症例報告の無い,ANに合併した若年性脳梗塞に対してリハビリテーションを行う機会を得ることができ,その経験を報告する. 【症例紹介】 症例は20代前半,女性.平成11年よりダイエットを始め,過食嘔吐から拒食に移行.平成17年6月当院心療内科初診.以降,外来通院となり入院歴も3回あり.平成20年4月15日当院心療内科入院.4月18日朝CT/MRIにて右中大脳動脈脳梗塞所見を認め,当院脳神経外科転棟転科.同日リハビリテーション開始となった. 【倫理的配慮】 本症例には,報告の趣旨を口頭で説明し,書面にて同意を得た 【理学療法初期評価時】 身長 154 cm,体重 21 kg,BMI (body mass index) 7 %.意識レベルは Japan Coma Scale(JCS)1,麻痺レベルはBrunnstrom stage (以下BRS),上肢 1,手指 2,下肢 4,Motor age test(以下MAT)は4点であった.Barthel Index(以下BI) 0点で,基本動作は寝返りと起き上がりは全介助レベルで,端坐位保持も困難であった.また高次脳機能障害として,左半側空間無視,構成障害とともに病態失認が認められた. 【リハビリテーション経過】 第6病日に介助歩行開始,第33病日には,麻痺レベルはBRS2-3-5と下肢の随意性に改善がみられた.第46病日にFree Hand歩行開始.第57病日で歩行レベルの向上,高次脳機能障害の改善とともにADLも拡大していきBIが65点となった.また,さらなる機能回復を目指し第60病日にリハビリテーション病院に転院したが,第74病日に当院転院となり当院でリハビリを継続した.第101病日には屋外歩行自立.第105病日に病棟内ADL自立.麻痺レベルは第162病日にはBRS: 5-6-6まで回復し,高次脳機能障害も改善した.在宅復帰に向け外泊訓練を実施した後,第164病日で自宅退院となった.また,低栄養状態は改善 ,体重増加も認められANは改善した. 【考察】 重度片麻痺とANが改善しADLが自立した要因は,早期よりリハビリが開始され,早期離床・早期歩行が実施できたこと.機能回復が成功体験となりリハビリに対する意欲が高まったこと.リハビリには体力が必要と感じ,食事が重要である事を指導することで,認知行動療法の一環として食事や身体状況について正しい認識を持たせる事が出来たことが挙げられる.
Bibliography:12
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_12