重症アトピー性皮膚炎に対する、ウェットラッピング法の併用

アトピー性皮膚炎の治療は,一時期ステロイドバッシングや民間療法の喧伝などにより混乱をきたしていたが,2000年に日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎診療ガイドラインが作成されてからは徐々に治療の統一がなされ,ステロイド外用剤の適正使用と保湿剤によるスキンケアの重要性が強調されている。しかし,スキンケアの重要性に対する認識は個々の医師によって差があり,その方法もまちまちなのが実状である。我々は2003年に小児科の専門外来として「アトピー外来」を開設し,2009年4月現在の患者総数は1,135人である。そのうち重症と判断した319人(うち小児193人)を対象に,ウェットラッピング法を用いて治療を行...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 58; p. 178
Main Authors 木村, 和弘, 村藤, 大樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2009
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.58.0.178.0

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Summary:アトピー性皮膚炎の治療は,一時期ステロイドバッシングや民間療法の喧伝などにより混乱をきたしていたが,2000年に日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎診療ガイドラインが作成されてからは徐々に治療の統一がなされ,ステロイド外用剤の適正使用と保湿剤によるスキンケアの重要性が強調されている。しかし,スキンケアの重要性に対する認識は個々の医師によって差があり,その方法もまちまちなのが実状である。我々は2003年に小児科の専門外来として「アトピー外来」を開設し,2009年4月現在の患者総数は1,135人である。そのうち重症と判断した319人(うち小児193人)を対象に,ウェットラッピング法を用いて治療を行った。ウェットラッピング法とは,保湿剤(炎症の強い個所にはステロイド外用剤を併用)を塗布した後に水で濡らした下着やクッキングペーパーで体を覆い,さらにその上から調理用ラップで被覆して2~3時間過ごすという手技で,通常のスキンケアで対応困難な重度の乾燥肌に対し,初期治療として行うものである。治療の標準化を図るために,クリニカルパスを用いて4日間の入院治療を行った。入院中に計6~8回のウェットラッピングを行い,退院後も含めて計10回行った後通常の外用療法のみへ移行した。患者は早ければ治療2日目の朝には皮膚状態の改善を実感し,退院時にはほぼ全例で乾燥肌の明らかな改善がみられた。短期間に皮膚の状態が劇的に改善することで退院後の外用療法に対する治療コンプライアンスが向上し,ひいては治療期間の短縮とステロイド外用剤使用総量の減量を達成することが可能となった。アトピー性皮膚炎治療ガイドラインに準拠した外用療法にウェットラッピング法を併用することは,重症アトピー性皮膚炎の高度な乾燥肌に対する初期治療として非常に有用であると考えられた。
Bibliography:23-11
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.58.0.178.0